2005.07.07

テクニカルニュース

環境

ヒートアイランドを緩和する不思議な霧「ドライミスト」

現在開催中の「愛知万博(愛・地球博)」で、暑さ対策の一環として導入された技術が注目されています。グローバル・ループやオーストラリア館の待合空間、ワンダーサーカス電力館の前庭、待合空間で涼しさを感じさせている不思議な霧「ドライミスト」です。

ドライミストは、ヒートアイランド現象の緩和をテーマに、当社を含むコンソーシアムが共同開発しました。


空気中に噴霧されているドライミスト

非常に細かく、水滴をほとんど意識させないドライミストは、他のミストとは異なり湿気特有の不快なべたつき感がありません。これを空気中に噴霧すると、すぐに気化して周辺の熱を奪うため、効率的に気温を2~3度下げることができます。ドライミスト噴霧装置は、風による水滴の落下を防止する工夫がなされている上、消費するエネルギー量が少なく、気象条件に合わせて自動運転制御します。

水とわずかなエネルギーで、効率的に気温を下げる環境にやさしい新技術です。イベント会場はもちろん、駅、バス停、空港、アーケード、アミューズメント施設などの暑さ対策としてご提案します。

コンソーシアム構成メンバーは名古屋大学、中部電力、能美防災、川本製作所、トーキン、当社。経済産業省中部経済産業局が公募した地域新生コンソーシアム研究開発事業として、平成15年度、16年度に採択され、共同開発しました。(テーマ名:ドライミスト蒸散効果によるヒートアイランド抑制システムの開発)


ヒートアイランド現象


ドライミストを利用した蒸散システム

●ドライミストの特長とメリット

  • 水とわずかなエネルギーで、効率的に気温を2~3度下げることができます。
  • 他のミストと異なり、湿気特有の不快なべたつき感がありません。
  • 噴霧装置は、風による水滴の落下を防ぐ工夫がなされており、気温、湿度、日射、風速、降雨など、各種センサーにより自動運転制御します。

ミクロの霧が、人を濡らさず、周辺の気温を2~3度下げる

ドライミストは、直径0.016mmという極めて微細な水の粒です。これを空気中に噴霧すると、すぐに気化して周辺の熱を奪い、気温を2~3度下げることができます。ドライミストを利用した蒸散システムは、半屋外空間では夏の暑さ対策に、また、都市のヒートアイランド現象の緩和に貢献します。


ドライミストの仕組み


実験結果(ミスト噴霧有テントとミスト噴霧無テントの比較)

■愛知万博で活躍する「ドライミスト」

愛知万博では、グローバル・ループの日除けテントや、電気事業連合会出展のパビリオンワンダーサーカス電力館の前庭と待合空間などにドライミストの蒸散システムが設置されています。また、オーストラリア館の待合空間やカフェにも増設されました。

グローバル・ループ

ループ上にある152カ所の日除けテントに設置されています。これは全長2.6kmにわたるループの約1/4にあたります。(写真にマウスを重ねると噴霧装置を拡大します)

ワンダーサーカス電力館の前庭と待合空間

前庭と待合空間に導入されており、コンソーシアムメンバーである名古屋大学にてデータ分析・効果把握を行っています。風に押し戻されたドライミストが噴霧装置周辺に付着して水滴となり、周辺の人や物を濡らすことがないよう、噴霧装置にはさまざまな工夫がなされています。


前庭に設置された噴霧ノズル(写真にマウスを重ねると噴霧装置を拡大します)。


待合空間に設置された噴霧ノズル(写真にマウスを重ねると噴霧装置を拡大します)。

オーストラリア館の待合空間やカフェ

庇によって作られた約240m2の待合空間やカフェに2種類の噴霧ノズルが設置されています。(写真にマウスを重ねると替わります)


気象条件に合わせて自動運転制御。消費するエネルギー量もごくわずか

ドライミスト噴霧装置の運転制御は、気温、湿度、日射、風速、降雨の各センサーからの信号をもとに、ドライミスト運転制御盤で自動的に行われます。また、コンピュータを用いた遠隔操作も可能です。

噴霧の方法は、空気と水の2液式(霧吹きの原理)ではなく、特殊高圧ポンプで水のみを圧送する1液式を採用しています。そのため、 温度を下げる能力で比較すると消費するエネルギー量は非常に小さく、家庭用エアコンのわずか1/20です。


風速計・日射計・降雨センサーなどからの
信号をもとに、自動運転制御

■システム構成図