2006.07.24

テクニカルニュース

環境

建物もおしゃれにクールビズ!

当社は、みのる産業(株)と共同で、緑化でビルの壁面を自由にデザインできる軽量で施工性の高いユニット型壁面緑化システムを開発・実用化しました。

年々進むヒートアイランド現象を緩和するために、建物屋上の緑化が盛んに行われていますが、大都市圏では、屋上緑化に加え、壁面緑化のニーズが高まっています。

本システムは、特殊な土壌とメッシュフレームからなる緑化ユニットを、壁面に固定するシンプルなシステムで、軽量化と施工性の向上による低コスト化を実現しました。また、ユニットの移動や交換が大変容易なため、緑による自由な壁面デザインが可能です。


さまざまなデザインで壁面緑化された大阪大学FRC研究棟

現在、本システムを用いた壁面デザインについて、ヒートアイランド現象の抑制効果も含め、大阪大学木多研究室と共同研究をしています。今後は、事務所ビル、学校、病院、商業施設、倉庫などに提案していきます。

みのる産業(株):緑化・造園工事を手掛け、農業機械、食品加工機、花卉など、幅広い事業を行っている。

●ユニット型壁面緑化システムの特長

  • シンプルなシステム構成により、軽量化と施工性の向上による低コスト化を実現しました。
  • ユニットの移動や交換が簡単で、緑化による自由な壁面デザインが可能です。
  • ユニットに用いる人工土壌は保水性・排水性に優れており、薄層でも多様な植物を生育させることができます。また、土壌飛散や流出がほとんどありません。

軽量で容易に設置できる壁面緑化システム

従来の壁面緑化技術は、ツル植物等で壁面を覆う簡易なものと、袋詰めの土壌を入れたユニットを壁面に組んだフレームへ設置するものがあります。しかし、前者は植物の成長に任せるため意図する緑化壁面をデザインすることができず、後者はシステム構成が複雑でしかもコストが高いという課題がありました。

本システムは、特殊な繊維と土壌を混合加熱して固めた熱融着培土をU字型メッシュフレーム(両面)で一体化した60cm角の緑化ユニットを、壁面に設置した取付け部材にボルトで固定するだけで緑化が行えます。

ユニットの重さは、乾燥時で約4kg、満水時でも約10kgと軽量で、移動や交換が容易なため、緑による自在な壁面デザインが可能であり、メンテナンスも容易です。また、ユニットには潅水システムが完備されており、潅水タイマーとの組合せにより、自動で潅水が行えます。肥料や殺菌剤等も潅水に混ぜて供給するため、管理の省力化が図れます。


システムの構成


当社技術研究所 中央実験棟の適用事例(画像にマウスカーソルを重ねると壁面の全景を表示します)

■壁面緑化の効果

水を含んだ土壌基盤と植物により、壁面温度の抑制に高い効果があります。

コンクリート壁面と緑化した壁面の温度を比較すると、全体として緑化効果のあることがわかります。


保水性、排水性に優れた熱融着培土

ユニット型壁面緑化システムに用いる熱融着培土は、スポンジ状で柔軟な固化培土のため、土と水と空気の比が1:1:1の理想的な構造となっており、保水性および排水性に優れるため、熱融着培土の厚みが5cmという薄さでも多様な植物を生育させることができます。また、土壌飛散や土壌流出はほとんどありません。プラグ型の苗を培土の窪みに植栽することで簡単に緑化できます。


熱用着培土(拡大):白い綿状に見えるのが熱融着繊維


プラグ型苗で簡単に緑化

■多様な植物に対応

緑化植物は、管理の容易性や定着性に優れているヘデラ類、マサキなど様々な植物を自由に組み合わせることができます。また、事前に植物を成長させたユニットを使用すると、設置後すぐに壁面を緑で覆うことも可能です。


植物(マサキ)を同一にしたユニット


植物(ヘデラ類)を組合せたユニット


ヒートアイランド抑制効果を検証

大阪大学FRC研究棟の壁面にさまざまなデザインパターンで壁面緑化を実施し、ヒートアイランド現象の抑制効果について検証しました。

デザインパターンは、建物上部では全体(100%)を緑化し、下方の左側はストライプの模様で間隔を変え、右側はチェッカーの模様で緑化密度を75%、50%、25%と変更しました。また、熱画像カメラの映像からは、デザインパターンごとの緑化効果が評価できました。


大阪大学FRC研究棟(画像にマウスカーソルを重ねると壁面の拡大画像を表示します)


熱画像カメラによる評価

ユニットの配置により、チェッカーやストライプなどの模様や企業マーク、文字などをデザインすることも可能です。また、様々な植物を植栽することができるため、緑の多様な質感や色を生かしたデザインも可能です。


チェッカー型の例 


ストライプ型の例

■開発者からの一言


技術研究所
中村主任研究員

壁面緑化システム開発のきっかけは、熱融着培土という特殊な固化培土との出会いにあります。この培土はタマネギの苗の根を傷めずに機械で植えつけるために開発されたもので、保水性・排水性に優れ、様々な形状に成形加工することができます。

壁面緑化の課題は垂直に立てた土の流出防止とコストダウンですが、この培土は土の流出がほとんどないためU字型メッシュフレームで挟むだけでよく、システム構成がシンプルなためコストダウンにも成功しました。

本システムの特徴はデザイン性です。都市の建物を飾る「緑の建材」として活用され、都市の景観向上やヒートアイランド現象の緩和に貢献できればと考えています。