2006.10.12

テクニカルニュース

環境

緑のネットワークで都市にもトンボを!

当社技術研究所のビオトープ「再生の杜」が緑豊かに彩り、多くの種類の昆虫や鳥類が見られるようになりました。

「再生の杜」は、江東区越中島の技術研究所にある広さ約2,000m2の庭園、都市部では最大級規模の都市型ビオトープです。自然生態系再生、資源再生、生活環境再生という3つの「再生」をテーマに、さまざまな実証実験を行っています。

本ビオトープでは、都市における生物多様性や緑の回復を目指し、人と自然がバランスよく共存するための様々な研究や開発に取り組んでいます。


都市型ビオトープ「再生の杜」

●「再生の杜」の特長

  • 水辺から陸上に至るエコトーン(遷移帯)を、多様な植生によってコンパクトに再現しています。
  • 自然と融合した都市景観を創出することで、癒しの場を提供します。
  • 企業としての社会的責任(CSR)や環境意識の高さをPRする上でも有効です。

3つの再生をテーマに各種実証実験を実施

「再生の杜」は、約2,000m2の敷地のうち約3分の1が水辺で、水辺から陸地へ徐々に環境が推移する「エコトーン(遷移帯)」を、湿生植物から水辺林、雑木林、草地、常緑樹林の多様な植生によってコンパクトに再現し、多様な生物の生息空間を創り出しています。


エコトーン断面図


上空からの眺め:写真手前から奥に向かって植生を変化させている

本ビオトープでは、自然生態系再生、資源再生、生活環境再生という3つの「再生」をテーマに、さまざまな実証実験を行っています。

  1. 都市の自然生態系の再生
    (1)ビオトープネットワークの構築、(2)緑の再生、(3)絶滅危惧種の保全
  2. 資源の再生・循環    
    (1)発生土の再利用、(2)廃タイヤの利用、(3)水質浄化、(4)枯草など植物残渣の利用
  3. 生活環境の再生
    (1)自然景観シミュレーション、(2)グリーンセラピーなど

■ビオトープネットワークの構築


ビオトープネットワーク構築の目標とした象徴生物「カワセミ」を誘致するための崖地を造成


崖地には、カワセミの習性を利用した巣穴が設けられている

■絶滅危惧種(植物)の保全


「タコノアシ(写真左)」「コオニユリ(写真右)」「アサザ」などの絶滅危惧植物を保全


「アサザ」「ヒツジグサ」他の湿地植物群落再生実験


絶滅危惧種「タヌキマメ」が埋土種子緑化(地域固有の種子で緑化)によって発生・保全

■廃タイヤを利用した浮島

生産廃棄物の再利用技術の一つとして、廃タイヤを利用した浮島を造成しています。


「ビオトープネットワーク」と「ビオナビ」で計画をシミュレート・評価

「再生の杜」の計画にあたっては、「ビオトープネットワーク」と「ビオナビ」の活用によって、生物生息地の関係、自然景観をシミュレート、評価しました。

■「ビオトープネットワーク」

生き物の視点から周辺地域の自然環境のネットワークを評価し、誘致できる生物や創出する生息環境を設定します。今回は、人工衛星画像(IKONOS)をもとに緑被率を割り出し、地域の公園との生態系のつながりを分析しています。その結果、横十間川親水公園(東京都江東区)に生息するカワセミなどの誘致が計画されました。


IKONOS衛星画像


緑被率と周辺の公園との生態系のつながりを分析

飛来を期待する生物(例)


カワセミ


モズ


カワラヒワ


ゴマダラチョウ


コシアキトンボ


クロスジギンヤンマ


ヒメアカタテハ


ジャコウアゲハ

飛来する鳥類や昆虫類の状況

  技術研究所 参考
江東区で確認されている生物
(2003年まで)
「再生の杜」
(飛来を期待)
屋上ビオトープ
(2004年春まで)
鳥類 24種 15種 仙台堀・横十間川公園 26種
木場公園 22種
昆虫類 トンボ 13種 11種 24種
(ポケットエコスペース32カ所)
チョウ 22種 17種 32種
(ポケットエコスペース32カ所)

■自然景観シミュレーション「ビオナビ」

ビオトープ計画におけるコンセプト(目的や用途)を明確にし、コンセプトに沿った完成後の景観イメージや四季の変化、経年変化などをさまざまな方向から視覚的に検証することができます。


本館1Fからの眺め


全体の眺め(秋)


四季の森(春)


その他のビオトープ計画・施工技術

その地域の生態系をより詳細に検討し、適切に保全する必要があります。当社は、「埋土種子緑化技術」や現地発生土を利用する「表土保全技術」、さらには「地域生態系評価技術(EcoPLAS)」など、さまざまな対応技術を用いて地域の生態系に最適なビオトープをご提案します。

■埋土種子緑化技術

表土の中には、そこに生育する植物の種子はもちろん、周辺の地域から風や動物により運ばれた種子など、地域固有の種子が多く堆積しています。これらを「埋土種子」と呼びます。既存の緑化方法では、画一的で多様性のない植生となりますが、埋土種子を用いた緑化では地域の気候風土・景観にあった多種多様な緑を早期に復元することが可能となります。


埋土種子緑化の実施結果(例):グラフは緑化2年目の主な樹木の種類とその生長量を示す。この実験では2年間で35種の樹木が出現。樹高1mを超えた樹木もある


土壌相違断面図:埋土種子はA0層とA層の上部(土壌表面から10cm位までの深さ)に多くが堆積している