2008.06.11

テクニカルニュース

施設価値向上

先端技術で紡ぐ巨大「まゆ」 ─ モード学園コクーンタワー

超高層ビルが林立する東京・新宿副都心。その中でも、ひときわ目を引く巨大な繭(まゆ)状の建物 ─ それが、現在当社が施工中の「モード学園コクーンタワー(2008年10月完成予定)」です。

高さ203.65m、完成すると日本一高い学校建築となる本建物は、繭をモチーフとした楕円曲面で構成されており、その施工には高い技術力と、外観に劣らぬ独創的な発想が要求されました。

当社では、3D(三次元)システムを駆使した「見える化」により、プロジェクトの初期段階から施工過程や完成のイメージを三次元で確認し、二次元では把握しづらい独特な形状を合理的かつ安全に施工すると同時に、工期短縮を図っています。


3D(三次元)システムを駆使した「見える化作戦」を展開

1階から屋上まで楕円曲面の特徴的な外観はもちろん、柱・梁などの建築部分と設備機器との干渉やメンテナンス性、開閉式へリポートなどの特殊建築形状の納まり具合など、二次元では把握しづらい箇所をチェックする上で、本システムは重要な役割を果たしています。

また、日々の作業内容を確認する際にも活用されており、計画した仮設や手順をベテランから若手職員、作業員まで共通の理解を得るのに役立てるなど、合理的で独創性あふれる施工を強力にバックアップしています。


3Dシステム画面


施工計画に活用


設備機器の干渉をチェック


開閉式ヘリポートの検討


格納式ゴンドラの検討


「独創的なフォルム」を実現する「独創的な施工」

本建物は、インナーコアと3つのダイアゴナル・フレーム(斜め格子状の柱梁を組み合わせたもの)で構成されています。外周を取り囲むダイアゴナル・フレームにより、建物に作用する鉛直力や水平力を効率よく地下構造へと伝達する構造です。

内部には12本のCFT(コンクリート充填鋼管)柱を用いたラーメンフレームを配置。加えて15~39階にはオイルダンパー150基を設置し、地震や風による揺れを低減しています。

施工時は、中央のコア鉄骨を先行し、これに外周部のダイアゴナル鉄骨を繋ぐ形をとっています。各階ごとに床・外壁を施工する積層工法と3次元計測により、精度と安全を確保しながら施工を行っています。


ダイアゴナル鉄骨


CFT柱

■階高の寸法を変えて合理的に施工

1階から高さ200mの屋上まで曲面で構成された外壁の施工では、個々の外装材ユニット(アルミカーテンウオール)の高さを少しずつ変える必要があり、メーカーでの製作も取付け作業も大変複雑になります。その煩雑さを解消するため、外装材ユニットの高さを統一し、階高を少しずつ変えることにしました。通常のビルでは、すべての階高が同じ寸法ですが、今回は外装材ユニットの高さを統一して、階高を変えるという逆転の発想を採り入れ、施工の合理化を図りました。


楕円曲面で構成された特徴的な外観


アルミカーテンウォールの高さを統一し、階高を少しずつ変えることで合理的に施工

■繭模様を表現するアルミカーテンウォール

外観を彩る不規則な繭の模様は、ダイアゴナル模様のアルミカーテンウォールで表現しています。このカーテンウォールには、ガラス部分にも白い模様が入っており、これにより絹糸のランダムなパターンを生み出しています。

このカーテンウォールは、1面1200ピース以上ありますが、模様などが少しずつ違っています。この膨大な部材を混在させることなく、必要な部材を必要なときに組み立てるジャストインタイムでの搬入を実現しています。


外観を彩る不規則な繭模様


ガラス部分には白い模様

■アルミカーテンウォール組立に利用した地下サイトファクトリー

風雨を避けるために地下2階にサイトファクトリー(現場内工場)を設置しました。ここでは、あらかじめメーカーの工場で組み立てられたアルミカーテンウォール(ハーフユニット:幅2m×高3.7m)を3つ繋げ、ガラスをはめ込み、模様を施すことで大型ユニット(幅6m×高3.7m)化しています。

完成した大型ユニットは、エレベータシャフト内のストック架台に載せ、架台ごとクレーンで連続的に最上階へ揚重し、タワークレーンで取り付け作業を行います。これにより、超高層建築の課題である風対策を解決しました。


サイトファクトリー内


大型ユニットを架台ごと揚重


建設工事の概要

■モード学園コクーンタワー新築工事

所在地 東京都新宿区西新宿1-7-3
発注者 学校法人 モード学園
設計・監理 株式会社 丹下都市建築設計
工期 平成17年11月~平成20年10月
構造・規模 鉄骨造(地上)、鉄骨鉄筋コンクリート造(地下)、一部鉄筋コンクリート造
地下4階・地上50階・塔屋2階


完成予想パース

■建設所長からの一言


小野建設所長

3年前、設計パースを初めて見たときは、正直驚きました。現在、現場の前を通り過ぎる人々も思いは同じらしく、皆、驚いた顔で建物を見上げては写真を撮っていきます。

「創造性にあふれた次世代を担う若者の人材教育の場にふさわしい、エネルギッシュな情報発信基地を創る」というお客様の想いが具現化された「繭=コクーン」を、超高層建築でいかに表現するかがこのプロジェクトの最大のテーマです。

3D-CADを駆使し、最初から三次元で施工過程や完成をイメージしながら取り組んだほか、既成概念にとらわれない独創的な発想で工事を進めています。この夢のような建物を完成させることは、すなわち当社のプロセスが一流であることの証と考え、全社の総合力を結集し、日々挑戦を続けています。