2008.10.30

テクニカルニュース

環境

ヤマネを守る、森をつなぐ生命の架け橋

当社は、(財)キープ協会やニホンヤマネ保護研究グループなどと共同でアニマルパスウェイ研究会※1を設立し、道路建設により分断された森林における小動物の生態系を保護する樹上動物専用の橋「アニマルパスウェイ」を開発しました。

天然記念物のヤマネ※2などの樹上動物は、道路などにより生息域が分断されると採餌や繁殖活動が妨げられ、減少・絶滅してしまうことが危惧されています。樹上動物を守ることは、森林を守ることになり、森林の生物多様性を維持する※3ことにつながります。

2007年7月、山梨県北杜市と研究会によって市道上にアニマルパスウェイが設置され、設置後わずか3ヶ月で、ヤマネやヒメネズミ等の小動物が850回以上も利用していることを確認するなど、その有効性について立証しました。

本技術は2007年度土木学会賞環境賞を受賞しています(2008年5月)。今後は、さらなる生態系保全のためにアニマルパスウェイの普及を推進します。


アニマルパスウェイを利用するニホンリス
(一辺25cmの三角形断面)


ヤマネ

アニマルパスウエイ研究会:(財)キープ協会「やまねミュージアム」、ニホンヤマネ保護研究グループ、大成建設(株)、(有)エンウィット

ヤマネ:体長約8cm、体重18gほど。夜行性で昆虫や種子、果実、花などを食べ、冬眠をする。国の天然記念物であり、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧に分類されている

リスは、冬に備えてクルミなどの木の実を地面に埋めるが、食べ残した木の実から芽が出て、樹木が生長し、また、木の実をつける。ヤマネは、花の蜜をなめる際に受粉を行う。このように樹上性動物は森と共生している

●アニマルパスウェイの特徴

  • 低コストかつ設置が容易で、安全性が高く、メンテナンスフリーです。
  • ヤマネをはじめ、ヒメネズミ、ニホンリスなど、さまざまな樹上性小動物が利用可能な構造となっています。

アニマルパスウェイの概要

今回開発したアニマルパスウェイは、1998年に山梨県が清里高原に造った「ヤマネブリッジ」の1/10の建設費(約200万円)に抑えました。また、経済性、メンテナンスフリーだけでなく、動物の安全性も考慮し、金属製ワイヤーによるトライアングル型の吊り橋構造を採用しています。

夜行性で囲われたところを好むヤマネと、昼行性で囲われたところを嫌うニホンリスなど、性質の異なる樹上性小動物がいずれも利用でき、また、天敵であるフクロウやカラスなどから身を隠すことができるよう、屋根やシェルターを設けるなど、さまざまな工夫が凝らされています。

本技術については、ビデオカメラによる24時間のリアルタイムモニタリングを実施し、その有効性を確認しています。


山梨県北杜市の市道上に設置された
 アニマルパスウェイ


立面図


アニマルパスウェイの構造
(右の三角形はヤマネ用のシェルター)


模式図


ビデオカメラによる24時間のリアルタイムモニタリングで小動物の利用を確認


アニマルパスウェイ研究会

アニマルパスウェイの開発に先立ち、当社は、2004年に(財)キープ協会「やまねミュージアム」※4、ニホンヤマネ保護研究グループ※5、大成建設(株)、(有)エンウィット(IT企業)と共同で「アニマルパスウェイ研究会」を設立しました。

本研究会は、公益信託日本経団連自然保護基金や(社)日本建設業団体連合会の支援を受け、(財)キープ協会敷地内に実証用パスウェイを設置して約3年間にわたる実証実験を実施し、施工性や冬期安全性、技術の有効性について実践的な研究を行いました。


実証実験用パスウェイの積雪状況
(厳寒期の安全性を確認)

(財)キープ協会「やまねミュージアム」:(財)キープ協会(KIYOSATO EDUCATIONAL EXPERIMENT PROJECT)は、1948年に故ポールラッシュ博士によって創設された財団法人。博士の理想と実践を引き継ぎ、「環境教育」「国際協力」などに取り組んでいる。1987年にボランティアによって「キープ・ネーチャーセンター」が建てられ、1998年に「やまねミュージアム」として設立

ニホンヤマネ保護研究グループ:
ヤマネに関する総合的な研究を行うことを目的に設立され、ヤマネ保護や森林保全のための具体策の提示、ヤマネを用いた環境教育の事業などを行っている