2013.07.31

テクニカルニュース

環境

放射性セシウム汚染土壌を高精度に分別し、大幅に減容化

当社は、セシウム汚染土壌に含まれる植物根等の有機物を高精度に分別できる新システム「パワーグラインドスクリーン」を開発※1しました。

環境省の試算によると、福島県内の除染作業で発生する汚染土壌等は、最終的には約3,100万m3(東京ドーム25杯分)に達すると見込まれています。中間貯蔵施設への保管に向けて、経済性や環境保全の観点から減容化が大きな課題となっています。

パワーグラインドスクリーンは、汚染土壌に含まれる植物根等に固着している土壌を高精度に分別することで、焼却処理による減容効果を高めると同時に、後工程となる土壌洗浄処理を高効率化します。本システムは、すでに開発済みである汚染土壌洗浄システム※2と焼却処理を併用することで、中間貯蔵施設の保管量を半分以下にすることが可能です。

環テックス(株)との共同開発

平成25年度 日本建設機械施工協会 会長賞を受賞「放射性物質汚染土壌の効率的な浄化・減容化システムの開発」


汚染土壌に含まれる有機物を高精度に分別できるパワーグラインドスクリーン


高精度に分別・減容化する「パワーグラインドスクリーン」

本システムは、円筒形の回転ふるい機の内側に設置した解砕羽が植物根に固着した土壌をほぐしてふるい落とすことで、土壌と植物根等の有機物を分別する仕組みとなっています。

土壌と有機物を高い精度で分別するため、有機物の焼却処理だけで最大10%程度減容化できる見込みです。また、分別後の汚染土壌は、装置トラブルを引き起こす有機物がほとんど含まれておらず、後工程となる洗浄処理の効率を高めます。わずかに含まれている有機物も洗浄過程で除去されるため、中間貯蔵施設で懸念されている汚染土壌中の有機物の腐食によるセシウムの再溶出を防止できます。


植物根:土壌が多量に固着(左)/分別処理後(右)

■解砕羽で植物根に固着した土壌を分離

従来機は、草木の枝葉と土壌の分別は容易ですが、植物根とそれに固着した土壌までは十分に分別できませんでした。本システムでは、ドラムの内側に植物根解砕用の羽を付けた小径ドラムを設け、それぞれを反対方向に回転させて植物根をドラム表面にこすりつけ、植物根に固着した土壌を分離・分別しています。


解砕羽で植物根をドラム表面にこすりつけ、固着した土壌を分別


■圧縮空気をドラムに吹き付け、粘土等による目詰まりを防止

汚染土壌の約半分はシルトや粘土といった粘性の高い土壌が占めており、従来機では目詰まりを起こすため分級(ふるい分け)が不可能でした。

本システムでは、ドラムに圧縮空気を吹き付けることで、粘性の高い土壌による目詰まりを防止しています。


圧縮空気を吹付けることで目詰まりを防止


高い除去率・減容率を両立する「汚染土壌洗浄システム」

当社は、除染により膨大に発生する放射性物質汚染土壌の減容化に対して、自主的な研究開発に取り組むほか、福島県と環境省の除染技術実証事業の中で実証試験を実施しました。独自技術のスクラビング(擦りもみ洗浄)とフローテーション(泡浮遊分離)機能により、高い浄化率を維持したまま減容化率を向上させることで、セシウム汚染土壌を最大で80%まで再利用できる「汚染土壌洗浄システム」を実用化しています。

今回開発した「パワーグラインドスクリーン」で高精度に分別し、「汚染土壌洗浄システム」と焼却処理を併用することで、中間貯蔵施設の保管量を半分以下にすることが可能です。

平成25年度 日本建設機械施工協会 会長賞を受賞「放射性物質汚染土壌の効率的な浄化・減容化システムの開発」


スクラバー
(擦りもみ洗い)

スクラビングの状況


フローテーション
(泡浮遊分離)

フローテーションの状況


フィルタープレス
(脱水機)

脱水ケーキの自動かき取り
(濃縮汚染土の処理作業を遠隔操作化)

■土壌洗浄プロセス

本システムの洗浄プロセスは、重金属等による汚染土壌の洗浄と同様、分級処理、スクラビング(擦りもみ洗浄)処理に大きく分けられます。

分級処理では、まず汚染土壌をふるいに投入し、粒径2mm以上の再利用可能な土壌を回収します。続いて残りの土壌をハイドロサイクロン(遠心分離機)にかけ、粒径63μm~2mmの土壌と、粒径63μm以下の高濃度汚染土(濃縮汚染土)に再分級します。

粒径63μm~2mmの土壌は、スクラビング処理によりセシウム付着部を効果的に剥がし取ることで回収できるため、汚染土壌が最大で80%まで再利用可能な洗浄処理土となります。


土壌洗浄処理フロー(例)