2013.09.30

テクニカルニュース

防災・減災

短工期・ローコストで既存建物を津波避難ビルに改修

当社は、既存建物を短工期・ローコストで津波避難ビルに改修する「フレーム・シェルター」の設計手法を確立しました。

発生が危惧されている南海トラフ巨大地震では、地震発生から津波襲来までの予想時間が比較的短い地域が多く、人命を守るためにも短時間で避難できる避難施設の整備が課題となっています。

フレーム・シェルターは、既存建物の周囲を鋼製メガフレームで囲み、津波に対する構造補強を行うと同時に避難場所を確保するものです。既存建物を解体して津波避難ビルに建て替える場合に比べて短工期・ローコストであり、施設を使用しながらの改修工事が可能です。

今後、津波対策が必要な地域において避難場所の確保が困難な既存施設に対しては、フレーム・シェルターによる耐津波改修をご提案していきます。なお、新築建物の津波対策については、津波避難ビル「アーチ・シェルター」をすでに開発していますが、さらにローコスト化・高層化への対応も行っています。


既存建物への「フレーム・シェルター」適用イメージ


既存建物の津波対策技術「フレーム・シェルター」

フレーム・シェルターは、既存建物の周囲をコの字型に囲む鋼製メガフレームと、メガフレームの転倒や滑動を防止するマットスラブ、マットスラブを支持する基礎杭、土間コンクリートから構成されます。

メガフレームは津波に対する構造補強材、避難階段、避難空間として機能します。既存建物に接する部材は構造体と一体化させ、内部には避難用の床と階段を設けて、屋上を覆い避難場所とします。また、マットスラブは既存建物の基礎部と一体化させて津波の波力に抵抗し、土間コンクリートは基礎周りを取り囲んで津波による洗掘(浸食)を防止します。

フレーム・シェルターの適用にあたっては、当社が保有する南海トラフ巨大地震等の津波データベースから津波の最大浸水深を求めるとともに、自社開発の津波シミュレーションシステムにより既存建物に到達する津波の波力を求めた上で、各部材の詳細を決定します。

■架設方法

メガフレームの架設方法には、既存建物を長辺方向に沿ってフレーム1体で囲むパターンと、建物の両端を長辺方向と直交するフレーム(2体程度)で囲むパターンがあり、既存建物の形状や構造に応じて使い分けます。


既存建物を長辺方向に沿って
フレーム1体で囲むパターン


建物の両端を長辺方向と直交する
フレーム(2体程度)で囲むパターン

■建て替えに比べ、工期・コストを約半分に削減可能

フレーム・シェルターを用いて、4階建て(高さ14m)、延床面積1,200m2のビルを最大浸水深15mの津波に備えて改修した場合、既存建物を解体して津波避難ビルに建て替える場合に比べ、工期を約4割、工費を約5割削減できる見込みです。また、フレーム・シェルターは、屋外に設置されるため、建物を使用しながらの改修工事が可能です。


新築建物の津波対策技術「アーチ・シェルター」

アーチ・シェルターは、波高20mの大津波に耐えて、人命と資産を守る津波避難・津波BCPビルです。

楕円形の筒状外壁「アーチウォール」とその内部に組み込まれた免震建物「インナービル」から構成されており、大地震発生時にはインナービルが地震力をかわし、アーチウォールが地震に続く津波の外力に耐える二重構造となっています。


震度7クラスの大地震や波高20mクラスの大津波に耐える「アーチ・シェルター」

■一重構造のローコスト化バージョン

免震性能を必要としないお客様向けに、アーチウォールとインナービルを一体化して一重構造とすることで、オリジナルバージョンと同様の耐津波性能を保持しつつ、ローコスト化を実現したバージョンを開発しました。本バージョンでは、インナービルの外壁や免震装置等が削減されると同時に、有効床面積が増加します。


左:オリジナルバージョン(二重構造)/右:ローコスト化バージョン(一重構造)

■その他バリエーション

オフィスタイプや高層住宅タイプも開発しました。アーチ・シェルターの屋上階に免震装置を設置し、上層建物を免震化することが可能です。


オフィスタイプ


高層住宅タイプ