2013.12.02

テクニカルニュース

環境

吹付アスベストを効率的に除去する「アストリサン工法」

当社は、超高層ビルの解体・改修工事に際して、鉄骨柱・梁に固着した吹付アスベストを効率的に除去・回収できる「アストリサン工法」を開発しました。

超高層ビルの鉄骨柱・梁に吹き付けられるアスベストは、吹付材にセメントが多く混入されており、鉄骨下地にしっかりと固着しています。そのため、従来工法による除去作業は重労働であり、かつ騒音を伴う上、煩雑な粉じん飛散防止対策等が必要でした。

アストリサン工法は、アスベスト吹付材に含まれるセメントを酸の水溶液により化学的に脆弱化させ、剥がしやすくするものです。本工法は、作業員の負荷が少なく、粉じんの発生量も極めて微量であり、作業に伴う騒音も従来工法と比べ大幅に低減することができます。また、剥離したアスベスト吹付材の回収効率も高く、工期を短縮できるため、従来工法に比べ除去費用を2割程度削減可能です。


無害な有機酸を高圧噴射し、吹付材を化学的に脆弱化

超高層ビルの鉄骨柱・梁に耐火被覆として吹き付けられたアスベストは、地震時に柱や梁が大きく変形しても剥離しないよう吹付材の中にセメントを多く混入しており、セメント塊のような硬さで鉄骨下地にしっかりと固着しています。

従来の除去作業は、先端にヘラのついた棒や電動工具などを使って吹付材を力ずくで剥ぎ取り、最後に鋼製タワシで鉄骨表面を磨くなど、作業員に重労働を強いるものでした。加えて、大きな騒音を伴う上、粉じんの飛散防止のために煩雑な対策が必要でした。

当社が開発したアストリサン工法は、食品添加物や医薬用品材料に用いられる無害な有機酸(酒石酸)を吹付材に高圧噴射して、化学的に鉄骨と吹付材の接着力を低下させることで、吹付材を除去しやすくするものです。作業員の負荷が少なく、粉じんの発生量が極めて少ないのが特長で、騒音も従来工法に比べ大幅に低減できるため、ビルを稼働させたまま作業を行うことも可能です。

なお、本工法については、アスベスト固着を模擬した実大の鉄骨梁を用いた実験により、その有効性を検証しています。


従来工法によるアスベスト吹付材の除去作業。物理的な除去であり、作業員の負荷が大きく、大きな騒音と大量の粉じんを伴う(実大実験風景)。


アストリサン工法では、有機酸を用いて吹付材に含まれるセメントを化学的に脆弱化。作業員にかかる負荷が少なく、粉じんもほとんど発生しない。また、騒音も大幅に低減される。

■市販の設備と新開発の専用ガンで構成

除去作業に用いる設備は、 通常の塗装工事に用いられる市販のエアレスポンプと高圧ホース、酒石酸水溶液を20MPaの高圧で吹き付ける新開発の専用ガンです。


専用ガン

■作業手順


アスベスト吹付材の表面に、10cm角のグリッドを描くように、専用ガンで高圧有機酸を噴射。吹付材に切れ目が入ると同時に、鉄骨との接着界面に有機酸が浸潤、接着力が弱まる。


手のひら大のヘラを接着界面に軽く差し込んでめくるだけで、吹き付け材が固まりとなって剥離する。


仕上げに、鉄骨に再び高圧有機酸を吹き付けてウェスで拭き取れば、アスベストが完全に除去される。

■サイコロ状で回収しやすい廃棄物

従来工法では廃棄物が不整形となりますが、本工法の場合、廃棄物はほぼ均一なサイコロ状で、回収しやすい形状となります。また、使用される有機酸の量は15リットル/m2程度であり、すべて吹付材に吸収されるため、液体状の廃棄物が発生することはありません。


従来工法の廃棄物


アストリサン工法の廃棄物