2014.11.12

テクニカルニュース

環境

騒音伝搬をパソコンで見える化、解析時間も大幅に短縮

当社は、波動理論に基づく音の伝搬解析をパソコンで実現する「3次元波動シミュレーションシステム」を開発・実用化しました。

一般に、広範囲にわたる騒音の伝搬を予測する場合は、エネルギー理論に基づく解析手法が用いられます。しかし、この手法は複雑な地形や構造物が音の伝搬に与える影響を再現することができないなど、予測精度に限界があります。また、波動理論に基づく解析手法は音の波動性を反映した高精度な解析を行うことができる反面、膨大なデータ処理が必要になることからスーパーコンピュータが不可欠であり、費用や準備期間等の面から実用的とは言えませんでした。

当社が開発した3次元波動シミュレーションシステムは、高精度な解析を行う領域を音の伝搬に合わせて自動的に移動させ、データ処理量を大幅に軽減することで、パソコンによる波動理論解析を可能にしました。解析に必要な時間は半日程度であり、また、解析結果をアニメーション表示できるため、防音壁など騒音対策の効果を視覚的に確認することができます。

本システムは、工場や発電施設などの騒音の伝搬予測や対策案の検討に適しており、今後は、土木工事の騒音伝搬予測や集合住宅の屋外騒音対策にも適用範囲を拡げていきます。


解析精度を落とすことなく、波動理論解析を簡素化

本システムは、音が伝搬している領域に限って計算メッシュを細分化する一方、音が通過した、あるいは到達していない領域の計算メッシュを粗分化することで、解析精度を落とすことなく、計算に必要なメモリーと時間を1/5程度に軽減・短縮します。

計算過程で音の伝搬に合わせて計算メッシュの細かさを自動的に調整し、音の干渉や共鳴、音源を取り巻く複雑な地形や構造物等が音の伝搬に与える影響を忠実に反映した高精度な解析をパソコンで行うことができます。

メッシュの細・粗設定は任意ですが、周波数300Hz程度までの騒音を扱う場合、高精度な解析領域で10cm程度、その他の領域で30cm程度に設定します。解析に要する時間は、対象面積により異なりますが、おおよそ半日程度です。

大型の送風機やコンプレッサーから発生する騒音などが該当。また、300Hz以下では、干渉や共鳴など騒音の波動現象が顕著に現れる


システムの概念(2次元):細かい計算メッシュで高精度な解析を行う領域(青色部分)と、粗い計算メッシュで精度を求めない解析を行う領域(緑色の部分)を、音の伝搬(円弧部分)に合わせて自動的に移動させている

■シミュレーション例

生産施設などの騒音源周辺の地形や構造物、騒音対策を反映した3次元モデルを構築した後、騒音源の情報を入力し、騒音の伝搬状況を解析・予測します。

本システムは、騒音の伝搬状況をアニメーション表示することができます。防音壁などの効果が一目瞭然となるので、最適な騒音対策の立案に役立ちます。


防音壁あり:伝搬していく音の先端の色が薄くなっており、防音壁の効果により騒音が軽減したことがわかる
防音壁なし(参考):伝搬していく音の先端(円弧の右部分)の色が濃く、強い音波が伝わる様子を示す

アニメーション表示

左:防音壁なし/右:防音壁あり