2014.12.24

テクニカルニュース

環境

深海が秘める無限大の可能性で地球を再生

当社は、深海が秘める無限の可能性を利用して、地球再生を図る深海未来都市構想「オーシャン・スパイラル(OCEAN SPIRAL)」を策定しました。

地球表面の約70%は海洋であり、そのうちの約80%を占める深海は、食料やエネルギー、水、CO2、資源など、さまざまな面で環境破壊が進む地球の再生に役立つ「深海力」を秘めています。オーシャン・スパイラルは、大気、海面、深海、海底を垂直統合する海洋構造物により、この深海力を活性化します。

今後は、本構想実現のために、技術的な課題を明らかにするとともに、2030年までに必要な技術を確立することを目指し、産学連携プロジェクトや企業連携プロジェクトを創出して技術革新に取り組みます。


オーシャン・スパイラルの概要

オーシャン・スパイラルは、海面付近に位置する巨大な球体「ブルー・ガーデン」、ブルー・ガーデン下部から海底に向かって伸びる螺旋状構造物「インフラ・スパイラル」、海底資源の生産拠点となる海底施設「アース・ファクトリー」から構成されます。

水深3,000~4,000mの平坦な海底が広がる海域に建設することを想定しており、漂流防止用のアンカーケーブルで海底に固定されています。


全体図

■ブルー・ガーデン(BLUE GARDEN)

直径500mの球体構造物で、主に人が活動する空間です。内部中央のタワー構造物(75層)には、ホテルや商業・コンベンション、オフィス、住居、研究・実験施設などが入り、居住者と来訪者を合わせて5,000人を収容することができます。


グランドエントランス


内部中央のタワー構造物


深海プロムナード

■インフラ・スパイラル(INFRA SPIRAL)

直径600mの円弧を描く全長15kmの螺旋状構造物で、ブルー・ガーデンとアース・ファクトリーを結びます。

内部の中空スペースを利用して、人をはじめ、電気、水、酸素、海底の鉱物資源、生物資源等を供給・運搬します。また、海水温度差発電施設、養殖場用の深層水取得設備、海水淡水化設備、深海モニタリング施設、深海探査船の補給基地なども組み込みます。


インフラ・スパイラル

■アース・ファクトリー(EARTH FACTORY)

外径1,500mのリング状構造物で、地球の資源開発工場です。

工場内では海底メタン生成菌を利用して、地上で排出されたCO2をメタンガスに転換したり、レアメタル、レアアース等の資源を持続的に回収します。


アース・ファクトリー


深海力で地球を再生

本構想は、深海が本来持っているポテンシャルを生かして、5つの分野で地球規模の「循環再生」と「人類社会の持続性」を向上させます。

■食糧:深海の温度と栄養を活かし、沖合養殖漁業の拡充

深海漁業の質と量の可能性は無限です。未来型沖合養殖は、冷たく栄養分豊かな大量の深層水で、養殖池の温度と栄養分を自由に調整することができます。


養殖池規模可変のイメージ

■エネルギー:深海の温度差を利用した海洋温度差発電により、エネルギーの自給自足

深海が持つ未利用エネルギーは無限です。太陽により暖められた海洋表面の水と深海(約-1,000m)の冷たい水の温度差を利用して熱機関を動かし発電します。

■水:深海の圧力差を利用した逆浸透膜式淡水化処理により、水の自給自足

深海で造ることができる淡水の量は無限です。深海の水圧と清浄性を活用した逆浸透膜式淡水化処理により、海水の淡水化を行います。

水以外の不純物を透過しない膜を利用したろ過の一種。浸透圧以上の圧力をかける必要があり、この圧力に深海の水圧を利用。


海洋温度差発電・逆浸透膜式淡水化処理

■CO2:CO2からエネルギーを造る地球本来の循環を活用し、「削減」から「利用」へ

深海のCO2処理能力は無限です。地球本来の炭素循環システムを利用し、「エネルギー + 水 + 海底微生物」で、CO2からメタンを製造します。

■資源:海水・海底中の未利用資源を活用し、「採る」から「育てる」へ

海底や海中の資源量は無限です。資源の宝庫とも言える熱水噴出口を人工的につくり、鉱物資源を育てる持続可能な鉱物資源開発を行います。


さまざまな技術的課題に挑戦

本構想実現のためには、さまざまな技術革新が必要となります。例えば、ブルー・ガーデンについては、外周フレームを樹脂コンクリート、外壁を透明アクリル板とFRPリブで構築することを想定しており、構造計画をはじめ、さまざまな課題が存在します。

■構造計画:コンクリートで直径500mの潜水都市を構築

強度:球体で水圧を受け止める
コンクリート:強度の強い樹脂コンクリート
配筋:さびない樹脂配筋
環境対応:ペットボトルリサイクル材を樹脂コンクリートに活用


水圧時のコンクリート部材の応力解析図(参考)

■外壁計画:深海における360°パノラマ透明球体に挑戦

強度:一片50mの三角形をアクリル板で実現。半透明FRPリブで強度補強
清掃:マイクロバブル等による生物付着防止
ジョイント部:止水、変位吸収他


球体を構成する1ユニット
(アクリル板+FRPリブ)


1ユニットの構造解析:
たわみ分布は許容値以下

■設備計画:深海の特性を利用した快適空間実現に挑戦

自然対流:海水と空気の温度差利用で、快適・涼風の自然対流
除湿:深海海水の冷熱利用でさわやか除湿空調
空調:除湿後の冷水再利用で、人にやさしい輻射空調
断熱:アクリル板(厚さ3m)の断熱効果で快適環境

■施工計画:洋上における球体の完全自動化施工に挑戦

未来技術の先取り:3Dプリンター方式(樹脂コンクリート打設、樹脂配筋)
実績ある技術の統合:大型型枠垂直自動転用ジャンプアップ工法、張出架設ディビダーク工法
海洋特有の施工法:常時、水面で施工(完成躯体水中沈下方式)


施工手順

■運用保全計画:フェールセーフとメンテナンス

安定した浮体になるよう、下側に直径200mの球体3体からなる浮力調整用構造物を接続し、構造物内に供給する砂と空気の比率により浮力調整を図ります。

上下動制御:砂充填型スーパーバラストボール
波浪制御:浮体式防波堤(客船ターミナルを兼ねた浮体式防波堤)
日常振動制御:制振装置(タワー塔頂部、歩廊やコアに組み込む)


スーパーバラストボール

深海未来都市構想「オーシャン・スパイラル」に技術情報を提供していただいた方々

海洋生態系、海洋深層水関連 東京大学・高知大学 高橋正征名誉教授
海洋温度差発電関連 佐賀大学 池上康之教授
深海情報 (独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)
水産資源、養殖関連 (独)水産総合研究センター
樹脂コンクリート、樹脂建材関連 昭和電工(株)
大型アクリル板関連 日プラ(株)