2015.03.05

テクニカルニュース

防災・減災

高性能振動台2基を備える「先端地震防災研究棟」が始動

当社は、技術研究所(東京都江東区)内に完成した「先端地震防災研究棟」の本格運用を開始します。

本研究棟は、これまでに観測されたあらゆる地震の揺れを再現できる大型振動台と、長周期地震動を3次元で再現できる大振幅振動台を備えた最先端の研究施設です。当社の地震防災技術の研究開発拠点として実験・計測と解析を一体的に推進するとともに、地震体感プログラムなど、地震防災に関するさまざまな情報発信を行います。

今後、当社は、建物の設計や地震対策の検討、新技術・防災対策等の検証はもちろん、ワンランク上の地震防災技術の提案や、防災に対する注意喚起の場として本研究棟を活用し、安全・安心な社会の実現に貢献していきます。


先端地震防災研究棟の概要

本研究棟には、建設会社として国内最高性能となる大型振動台「E-Beetle(イー・ビートル)」と、超高層ビルの揺れを再現できる世界でも例を見ない大振幅振動台「E-Spider(イー・スパイダー)」が設置されています。本実験棟では、これら2基の振動台により、直下地震の揺れから長周期地震動による超高層ビルの揺れまで再現することが可能です。


各振動台の加振範囲(模式図)

■世界中のあらゆる地震の揺れを再現できる大型振動台「E-Beetle」

「E-Beetle」は、直下地震や海溝型の地震など、これまでに観測された世界中のあらゆる地震の揺れを再現することができます。再現可能な水平方向の揺れの加速度(2.7G)と変位(±80cm)は、過去に観測された地震波の数値を上まわり、建物が崩壊するまでの挙動や、解析では把握しづらい天井の複雑な挙動など、新たな知見が期待できます。


大型試験体の実験風景(参考:旧振動台)

■長周期地震動を3次元で再現できる大振幅振動台「E-Spider」

「E-Spider」は、短周期から長周期に至る地震の揺れを、水平方向のみではなく、上下方向や回転方向も含めて3次元で再現することができます。再現可能な揺れの変位は±150cm、最大加速度は1.0Gで、構造体の被害はもちろん、設備や什器、さらには揺れが人に与える影響の解明などにも効果を発揮します。


本装置では長周期地震動による超高層建物頂部の揺れを再現することが可能


長周期地震動が設備機器・什器・人に与える影響を把握


地震時の高層ビルの揺れや、免震効果を体感

本研究棟は、最先端の地震防災技術をお客様へご紹介する役割も持っており、地震防災技術を学ぶことができる展示スペースをはじめ、大振幅振動台上に設置した専用キャビン内で免震効果や長周期地震動による高層ビルの揺れなどを体感することができます。

「E-Spider」キャビン内の壁面には居室を模したCGを投影し、振動台の揺れに応じた家具などの挙動をリアルタイムで解析して表示します。東日本大震災時に都内の高層ビルで観測された長周期地震動の揺れや、一般建物と免震建物の揺れの違いを体感することができます。


「E-Spider」上に設置した専用キャビン(左)と内部の様子(右)


キャビン内の壁面に投影された居室(CG)。左が初期状態、右が加振後の状況