2016.07.11

テクニカルニュース

健康・快適

病室内の不快な臭いを即座に感知し、拡散前に除去

当社は、病室内で発生する不快な臭いをいち早く感知し、すばやく換気を行うことで拡散を防ぐ臭気制御システム「スメルケア」を開発しました。

一般に病室内は、患者にとって快適な環境を維持するために常に空調を稼働させています。しかし、オムツ交換や食事など、強い臭気が発生する場合は、空調効果を低下させる窓開け換気に頼るケースが多く、一旦臭気が病室内に拡散してしまうと、空気清浄機などを用いても短時間で除去することが困難です。

当社が開発したスメルケアは、高感度の半導体センサーにより臭気を即座に感知し、臭気濃度に応じて給排気ファンを制御することで拡散を防ぎます。本システムを用いると、これまで1時間以上たっても除去できなかった臭気を、わずか10分程度で除去することが可能となりました。

今後、当社はこのシステムを、病院や介護施設、ホテルなどにも提案していきます。

センシング機器メーカーの新コスモス電機(株)と共同開発

スメルケアのシステム概念図

システムの概要

本システムは、高感度の半導体センサーを内蔵したボックス型の制御ユニットに集約されており、非常にシンプルな構成となっています。また、制御ユニットは複数の排気ダクトを集約する天井内の排気チャンバーなどに設置します。

臭気が発生すると、まず半導体センサーがこれを感知し、臭気の発生を制御ユニットに伝えます。制御ユニットは、半導体センサーからの情報を元に中央監視システムへ制御信号を送り、各病室内の換気レベルを即時にアップする仕組みとなっています。

制御ユニットの一例
制御ユニットは天井裏の排気チャンバー内に配置

半導体センサーによる臭気感知の仕組み

半導体センサーは、臭気分子の酸化還元反応を利用して臭気を感知します。通常時は、半導体センサーは表面の酸素イオンの働きで電気が流れないようになっていますが、臭気が発生し、その分子がセンサーに触れると、還元反応で酸素イオンが除去されて電気が流れるため、臭気の発生を感知することができます。

半導体センサーの臭気感知(模式図)

模擬臭気ガス散布による性能検証

本システムの性能検証にあたっては、模擬臭気ガス(エタノール)を使用した実証実験を行いました。

本システムによる換気制御がない場合、1時間以上かけても臭気を除去することはできませんが、本システムでは換気レベルを通常よりも上げることで、わずか10分足らずで臭気を除去することができました。なお、システムの換気レベルはカスタマイズが可能です。

スメルケアによる換気制御を行った場合:臭気の発生と同時に換気レベルを通常よりも高い値(1時間あたり3回室内の空気を入れ換える)に制御し、わずか10分足らずで臭気濃度を臭気発生前の状態まで減衰させた(同じ試験を2回実施)
スメルケアによる換気制御がない場合:臭気拡散後も排気量が一定であるため、1時間以上経過した後も臭気を完全に除去することはできない