2018.03.30

テクニカルニュース

防災・減災

免震ビルの揺れ幅に応じて最適な減衰力を発揮「デュアルフィットダンパー」

当社は、免震ビルの揺れ幅に応じて減衰性能が自動的に切り替わる可変減衰型ダンパー「デュアルフィットダンパー」を開発しました。

発生が確実視されている南海トラフを震源とする巨大地震への備えの一つとして、今、長周期地震動対策が急がれています。阪神・淡路大震災以降、多くのビルで免震化が進んでいますが、地震の揺れを長周期化する免震ビルは、巨大地震が引き起こす長周期地震動と共振すると免震装置(積層ゴム)が大きく変形し、クリアランスを超えて免震ピットに衝突する恐れがあります。こうした事態を防ぐためには、免震ビルの揺れを減衰させるオイルダンパーを巨大地震にあわせて増やすなどの対策が考えられますが、この場合、より発生頻度の高い中小地震(震度5以下)時にも免震装置の変形を過剰に抑制するため、免震効果が損なわれるという問題が発生します。

デュアルフィットダンパーは、免震層の変位の大きさに応じてダンパーの減衰性能を2段階で自動的に変化させ、地震動の大きさに適した減衰力を発揮するオイルダンパーです。本装置は巨大地震に対応してダンパーを増やしても中小地震時の免震効果を損ないません。また、完全パッシブ型で、メンテナンスフリーとなっています。

本装置は、すでに国土交通大臣認定を取得しており、2017年夏に着工した当社開発の大型免震オフィスビルにも適用しています。また、新築のみならず、既存ビルにも適用可能であり、さまざまな条件に対応可能な切替変位のラインナップを取り揃えています。

カヤバシステムマシナリー(株)との共同開発

デュアルフィットダンパー

装置の概要

装置の構造と可変減衰の仕組み

一般的な免震用オイルダンパーは、ロッドを通してビルの揺れをピストンに伝え、ピストンの動きをシリンダー内に充塡したオイルの油圧抵抗により抑制するもので、抵抗値はピストンを貫通する孔に設けられた減衰弁により調整しています。

デュアルフィットダンパーは、基本的な構造は一般的な免震用オイルダンパーと同じですが、これにピストンを貫通する追加孔と、追加孔を貫いて軸方向に伸びる切替ロッドが新たに加えられています。切替ロッドは中央部が細く、両端部が太くなっており、揺れ幅が小さい中小地震時には追加孔と切替ロッドの隙間を油が通り抜けることで油圧抵抗を小さくして減衰性能を下げ、また揺れ幅が大きくなる巨大地震時には追加孔を切替ロッドの両端部が塞ぐことで油圧抵抗を高めて減衰性能を上げる仕組みとなっています。

完全パッシブ型でメンテナンスフリー

本装置は、特殊な電気的制御を必要としない完全パッシブ型であり、地震後のスイッチ解除などは必要ありませんので、メンテナンスフリーです。

参考:オイルダンパーの原理

オイルダンパーの減衰力は、ピストンの運動によって内部のオイルが狭い通路を通るときの抵抗力によって発生します。また、減衰力は作動速度に応じて変化するため、水鉄砲と同じようにゆっくり押したときは抵抗力が小さく、一方、早く押したときは抵抗力が大きくなります。

減衰効果と適用事例

減衰効果

免震システムは、免震装置が地震の揺れを吸収することで、上階の揺れを抑える仕組みとなっています。免震装置の変形、すなわち免震層の変位は地震の規模に応じて大きくなるため、右図のように免震ピットには一定のクリアランスが設けられています。

巨大地震の発生が懸念される現在、免震層の変位が免震ピットのクリアランスを超え、建物が免震ピットに衝突することが危惧されています(下図の黒線)。これに対して、オイルダンパーを増やすことで巨大地震時の免震層変位を抑えようとすると、頻繁に発生するより小さな地震時にも免震装置の変形を抑制するため、上層階の揺れを十分に抑えることができず、結果として、免震効果が損なわれることになります(青線)。

デュアルフィットダンパーは、免震層の変形に応じて減衰性能を自動で切り替えるため、巨大地震を想定したダンパー量であっても、中小地震時の免震効果を損なうことがありません(赤線)。性能確認実験でも設定した切替変位で減衰性能がスムーズに切り替わることを確認しています。

適用事例

本装置は、当社が横浜市で建設中の大型免震オフィスビル(19階建て、延床面積102,000m2)に適用しています。本建物では、免震ピットに本装置を20台、通常のオイルダンパーを40台設置し、今後予測される巨大地震に備えます。

横浜市みなとみらい21-54街区で建設中の「(仮称)MM21-54街区プロジェクト」