2018.07.02

テクニカルニュース

省エネ

BIMと連携し、設計の初期段階でZEBの性能を評価する「ZEB Visualizer」

当社は、設計の初期段階でZEB※1の省エネルギー性能を迅速に評価できるコンピュテーショナル・デザインツール「ZEB Visualizer」を開発・実用化しました。

年間のエネルギー消費量が実質ゼロとなるZEBは、持続可能な社会実現の切り札として期待されています。ZEBの性能は国が定める基準に基づいて評価され、基準建物と設計建物との一次エネルギー消費量の比率を示すBEI※2が0.5以下の場合にZEBを達成したと判定されます。BEIの算出には、「WEBプログラム※3」を利用しますが、実施設計レベルの詳細な条件を入力する必要があり、設計初期段階においてZEBの性能を評価することは難しいのが現状です。

当社のZEB Visualizerは、BIMやCAD図面から構築した3Dモデルと省エネ設計のノウハウを集約した設計ライブラリにより、設計初期の段階における建物の省エネルギー性能を短時間で評価します。ZEBの達成度合いはチャートで確認でき、複数のデザイン案を繰り返しシミュレーションしながら、ZEB提案を最適化していくことが可能です。

今後、当社は、ZEB化を目指す建物の検討に本ツールを活用することで、お客様のニーズに即した最適なZEBを迅速に提案していきます。

Zero Energy Building

Building Energy Index。値が小さいほど、省エネルギー性能が高いと判断される

国立研究開発法人 建築研究所が提供する計算支援プログラム

ZEB Visualizerによるシミュレーション例(1F事務室、エントランス他)
ZEB Visualizerによるシミュレーション例(1F事務室、エントランス他)

「ZEB Visualizer」の概要

システム構成

本ツールは、設計初期段階の建築デザインからシミュレーション用3Dモデルを迅速に構築する3Dモデラーと、建物用途別、部屋用途別に省エネ設計のノウハウを集約した設計ライブラリから構成されます。

BIMやCAD図面などの設計データを3Dモデラーに入力すると、設計ライブラリにある外壁・屋根・床等の部材や方位、空調・換気・照明・給湯設備、省エネルギー基準に準拠した建材や窓ガラスのデフォルト仕様が自動設定された3Dモデルが構築される仕組みとなっており、設計者はこのデフォルト仕様をベースに、各種仕様を適宜変更することで、計画案のシミュレーションを行います。

システム構成図
システム構成図

ZEBの達成度合いを一目で確認。最新技術の省エネ効果も算出可能

本ツールを用いると3DモデルのデータからWEBプログラム用の入力データが自動生成されるため、短時間でBEI値を算出することができます。また、BEI値から自動作成されるZEBチャートにより、ZEBの達成度合いを一目で確認できるため、複数のデザイン案を繰り返しシミュレーションしながら、ZEB提案を最適化していくことが可能です。

加えて、WEBプログラムでは算出することができない最新省エネ技術の効果も算出できるため、お客様の要望に即した最適なZEB提案が可能です。

シミュレーション結果(例)。右下がZEBチャート
シミュレーション結果(例)。右下がZEBチャート
シミュレーションを重ねて一次エネルギー量の消費量を比較。お客様の要望に即して、最新の省エネ技術を取り入れたZEB提案も可能
シミュレーションを重ねて一次エネルギー量の消費量を比較。
お客様の要望に即して、最新の省エネ技術を取り入れたZEB提案も可能

ZEB設計業務の生産性向上に寄与

WEBプログラムの「標準入力法」による一次エネルギー消費量算出には、建物に関する詳細条件の入力に数週間かかっていましたが、本ツールでは建物計画段階の概要情報をもとに従来の1/10以下の時間で算出することができるため、設計業務の大幅な生産性向上を図ることができます。

参考:WEBプログラムの「標準入力法」

省エネルギー基準の一次エネルギー消費量計算手法であるWEBプログラムには、詳細計算のための「標準入力法」と簡易計算のための「モデル建物法」の2つがありますが、ZEBの性能評価には詳細計算が必要なため、標準入力法が用いられます。また、標準入力法には実施設計相当の詳細データが必要となるため、データの入力には数週間かかります。

WEBプログラムでZEBの性能を評価するためには実施設計相当の詳細データが必要となる
WEBプログラムでZEBの性能を評価するためには実施設計相当の詳細データが必要となる

持続可能な社会実現への切り札

日本で初めてZEBとしての第三者評価を取得

ZEBは、建築計画の工夫や技術によってエネルギー消費を極力小さくする(省エネ)と同時に、太陽光発電などによってエネルギーを自給する(創エネ)ことで、実質のエネルギー消費量をゼロにすることを目指す建物であり、持続可能な社会実現のための切り札とも言われています。また、ZEBの性能は国が定める基準に基づいて以下の3段階で評価され、ZEB Ready以上はZEBと判定されます。

ZEB 100%以上の削減(BEI 0以下)
Nearly ZEB 75%以上の削減(BEI 0.25以下)
ZEB Ready 50%以上の削減(BEI 0.5以下)

ZEBに関する評価・認証は2016年4月1日から始まっており、第1号の認定は2016年2月に当社設計施工で完成した「生長の家 茨城県教化部新会館」(茨城県笠間市)です。本建物は、建物の高断熱化と高効率機器の採用、太陽光発電システムによる再生可能エネルギー導入により、実質的なエネルギー消費量を108%まで削減しています。詳しくは、当社コーポレートサイト「ZEBで変える日本の未来」をご覧ください。

省エネを超える価値

近年は、ESG投資への関心の高まりを背景に、ZEBが生みだす新たな価値に注目が集まっています。

ESG投資は、企業の環境・社会活動、企業統治を重視して投資を行うものです。ZEBは、単なる建物単体の省エネに留まらず、その普及が持続可能な社会実現のためのインフラとなり得ることから、これに取り組む企業そのものの価値を向上させる効果が期待できます。また、不動産市場においても、ZEBへの投資が建物の価値を高め、テナントビルの賃料向上につながる可能性があることも指摘されはじめています。

加えて、ZEBとウェルネスを組み合わせることで執務環境をより快適・健康的にしようという取り組みも見られるなど、ZEBは、省エネという枠を超えて、その可能性を広げつつあります。