当社は、埋戻し地盤の品質確保と環境負荷低減を目的に、ソイルセメント(土とセメントを混ぜたもの、流動化処理土) とバイオ炭を混合したバイオ炭ソイルセメント「SUSMICS-S(SUstainable + SMI(炭) + Carbon Storage + Soil cement)」を開発し、現場に適用しました。
SUSMICS-Sは、バイオ炭の吸水特性により、ブリーディング(構成材料の分離・沈降現象)が生じやすいソイルセメントの品質を向上します。また、バイオ炭に固定された炭素を地盤内に貯留することで、大気中のCO2除去に貢献します。

背景
地盤の埋戻し工事に使用されるソイルセメントは、建設発生土や現地土と水、セメント系固化材を混合して製造する資源循環型の地盤材料です。この材料はコンクリートと比べて水セメント比が高いため、ブリーディングが生じやすく、ソイルセメント内で分離した余剰水の処理が品質管理上の課題となっています。他方で、固化材として使用するセメントは製造時に多量のCO2を排出するため、環境負荷の低減に寄与する技術の実用化も急務の課題となっています。
バイオ炭ソイルセメント「SUSMICS-S」の特長
SUSMICS-Sを地盤の埋戻し工事に使用するメリットとして、次の二つの特長があります。
1.ブリーディング率の低減
SUSMICS-Sに使用するバイオ炭は、木質バイオマスの炭化物を粉状にしたもので、粒子構造が多孔質である特長を有します。バイオ炭が時間の経過とともにソイルセメント内の余剰水を吸水することで水セメント比が低下し、材料分離抵抗性の指標となるブリーディング率の低減に寄与します。この特性により、ブリーディングが生じやすいソイルセメントの品質が向上します。


2.カーボンネガティブの実現
SUSMICS-Sに使用するバイオ炭には、樹木が成長過程で大気中から吸収したCO2が難分解性の炭素として固定されています。埋戻し工事にSUSMICS-Sを利用すれば、バイオ炭の添加量を調整することでバイオ炭に固定された炭素を地盤内に貯留可能です。そのため、ソイルセメントの施工に伴うCO2排出量の削減効果が得られ、構成材料由来のCO2排出量を上回るカーボンネガティブも実現できます。
SUSMICS-Sの製造は、既存のソイルセメント製造装置を利用し、建設発生土と水、セメント系固化材に粉状のバイオ炭を添加するだけで完了します。また、施工面では、従来のソイルセメントと同等の流動性を確保し、品質面でも、施工後の性能試験で埋戻し地盤として求められる性能を満足していることを確認しています。
適用事例:
日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業新築工事(B街区)
日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業新築工事(B街区)における新築建物外周地盤の埋戻し工事にカーボンネガティブ仕様のSUSMICS-Sを88m3使用しました。
流動化処理土1m3当たり40kgのバイオ炭を添加したカーボンネガティブ仕様の配合を採用しており、このバイオ炭には1kgあたり実質2.3kg相当のCO2が固定されています。地盤内には、8.15tのCO2に相当する炭素を貯留しました。この貯留量は、セメント系固化材の製造等に伴って排出されるCO2量の181%に相当し、SUSMICS-Sを使用することで、従来の流動化処理土での施工に対してカーボンネガティブを達成できました。

SUSMICS-Sの施工状況 従来の流動化処理土施工と同じ運搬車を使用
今後の展望
清水建設ではSUSMICS-Sの適用先をソイルセメント山留め壁や建物基礎下の地盤改良に拡張し、ソイルセメントの品質向上と脱炭素社会の実現に貢献していきます。