2025.07.11

テクニカルニュース

健康・快適

省エネ

空間全体から個人まで。働く環境を快適にするシミズの環境制御技術

働き方の多様化が進み、オフィス環境に求められる機能や役割は大きく変化しています。働く場所や時間を自由に選択できるActivity Based Working(ABW)が注目されるなど、オフィスは単なる「働く場」から「快適で生産性の高い環境」へと進化を遂げています。

当社の持つ幅広い環境制御技術のラインナップにより、オフィス空間全体から個人のスペースまで、進化し続ける働き方を柔軟にサポートします。

快適で生産性の高いオフィス環境に求められる条件とは

より能動的な働き方を促進するためには、次のことが必要です。

  • 多様な働き方や個人の好みに応じた柔軟な環境提供
  • 快適性と省エネルギー性の両立
  • 自らの環境を選択・調整できることによる自己効力感の向上

これらを実現するためには、空間全体の環境を効率的に管理する仕組みから、利用者個人に寄り添った細やかな調整が可能なシステムまで、幅広い環境制御が必要です。ここでは、オフィス環境における大きな環境要素からパーソナルな環境要素までを制御する3つの革新的な技術をご紹介します。

環境制御技術の概要

環境制御技術の全体イメージ
環境制御技術の全体イメージ

1.AIを活用した室内環境ナビゲーションシステム「環境ナビ」

オフィス全体の環境を効率的に管理するために開発されたのが「環境ナビ」です。このシステムは、空間全体を一つの大きな環境空間として捉え、空調や照明の設定をゾーンごとに最適化します。利用者の位置情報や環境情報を収集し、AIがそれを解析することで、エネルギー消費を最小限に抑えつつ、快適な環境を提供します。

室内環境ナビゲーションシステム「環境ナビ」のイメージ
室内環境ナビゲーションシステム「環境ナビ」のイメージ
システム構成
システム構成

主な特徴

  • デジタルツイン技術の活用
  • サイバー空間上で室内環境とエネルギー消費量をシミュレーションし、最適な設定値を算出。これにより、利用者の空間の使い方と当日の気象条件に合わせた効率的な環境制御が可能です。

  • 環境の可視化
  • 利用者は、現在から数時間先までのその日の室内環境を環境モニタリングシステムで確認することができ、自ら最適な場所を選択する判断材料とすることができます。

  • 省エネルギー性の向上
  • 必要なゾーンだけを制御することで、従来の均一制御と比較して約5%のエネルギー削減が可能です。

2.超個別空調システム「ピクセルフロー」

ABWを採用したオフィスでは、働く場所やレイアウトが自由に変更されるため、従来の固定的な空調システムでは対応が難しい状況が生じます。この課題を解決するために開発されたのが「ピクセルフロー」です。このシステムは、利用者の位置情報や好みに応じて空調を個別に制御し、快適性を高めつつ、エネルギー効率と利用者の満足度を向上させます。

超個別空調システム「ピクセルフロー」

主な特徴

  • 高密度グリッド配置のフロアファンユニット
  • 床面に0.6mピッチでフロアファンユニットを配置し、4台ずつ(約1.5m2グリッド)の制御単位とすることで、利用者ごとに最適な気流感を提供し、好みの温熱環境を実現します。

  • 木材を循環利用した木質OAフロア
    木材を循環利用した木質OAフロア
  • 吹出口とファンを一体化したフロアファンユニット
    吹出口とファンを一体化したフロアファンユニット
  • 環境好み制御
  • 赤外線アレイセンサーや位置情報システムを活用して、利用者の位置や好みに応じた空調を自動で調整します。特に、寒がりの利用者を優先する制御ロジックを備えており、隣り合う利用者間で異なる体質がある場合には、寒がりの人に配慮してフロアファンユニットの運転強度を弱めたり、停止させたりすることが可能です。一方で、涼しい環境を好む利用者が快適性を損なう場合には、「環境家具」を活用することで補完的な調整を行います。

  • 快適性と省エネルギー性の両立
  • 吹出温度を過剰に下げることなく、気流感を個別に制御することで、省エネルギー性と快適性を同時に実現します。また、床吹出空調の特性を活かし、上下方向の温度ムラを軽減することで、足元の冷えを防ぎながら効率的な空調を提供します。

3.パーソナル環境微調整デバイス「環境家具」

「環境家具」は、利用者自身が環境を微調整することで、快適性と満足度を向上させるためのデバイスです。このデバイスは、利用者に環境をコントロールする裁量権を与えることで、自己効力感を高める役割を果たします。また、ピクセルフローの制御において寒がりの人を優先した結果、満足度が十分に得られなかった利用者に対しても、環境家具を活用することで快適性を補完し、さらなる満足度の向上を実現します。

さらに、自己裁量による快適な環境がもたらす心理的な安心感や能動的な働き方の促進は、利用者が自らの業務に積極的に取り組む意欲を高め、結果として企業全体のパフォーマンス向上にも寄与します。

主な特徴

  • 送風機能
  • 内蔵ファンが微気流を発生させ、利用者に心地よい気流を提供します。天板のスイッチで無段階調整が可能です。

  • 足温機能
  • 白熱レフ電球による放射熱で足元を暖め、寒さ対策をサポートします。

  • サウンド機能
  • ホワイトノイズなどの音響を利用して周囲の雑音をマスキングし、集中力を高めます。

  • コミュニケーション・シグナル機能
  • 利用者のステータスを示すライト機能。集中して作業したい場合や話しかけてもよい場合など、ステータスを可視化します。

  • BCP対応
  • 大容量バッテリーを搭載しており、停電時にも8~10時間の連続使用が可能で、BCP(事業継続計画)にも対応しています。

パーソナル環境微調整デバイス「環境家具」

温故創新の森 NOVAREへの導入と今後の展望

これら3つの技術は、清水建設のイノベーション拠点 「温故創新の森 NOVARE」の情報発信・交流施設「NOVARE Hub」に導入されています。NOVARE Hubでは、ABWを採用した自由度の高いオフィス空間と、利用者一人ひとりに最適化された環境制御技術が融合し、快適で持続可能な働き方を実現しています。

  • 環境家具の利用シーン
  • 環境家具の利用シーン

環境家具の利用シーン

動画:環境ナビからの情報とカメラ映像とを重ね合わせ現地表示するSensing XR(1:16)
動画:個人の位置と好みを反映するピクセルフローの運用状況を可視化したNOVAREデジタルツイン(0:24)

清水建設ではこれらの技術を活用して、これからも未来のオフィス環境の可能性を広げていきます。