2010.07.29

テクニカルニュース

環境

ビル風を立体視で「見える化」! 計測時間も大幅に短縮

当社は、風洞実験におけるビル風の挙動を3次元で「見える化」する「可視化画像流速計測システム」を開発しました。風洞実験による風の動きを高速度ビデオカメラで計測し、立体視で可視化するシステムであり、このシステムは計測・解析の精度が高く、処理時間も大幅に短縮できます。

本システムは、液体やエンジン燃焼の解析などに使われる粒子画像速度計測法(DPIV)を活用したもので、風と一緒に噴霧した特殊なミストにレーザー光を当て、その動きを解析して3次元の可視化処理を行います。従来の可視化技術は、建物の1断面毎(風上や風下側等)に区分けして計測を行うため、建物全体の計測に膨大な時間を必要としましたが、本システムは、一度に2断面ずつ、また模型背面も同時に計測可能なため、数時間で計測結果を得ることが可能です。

建物を取り巻く風の動きを全方向から精度高く計測し、複数建物に対応しているため、ビル風を考慮した最適な施設計画をご提案できます。

建物の断面形状が異なる2断面を同時に計測、精度の高い比較が可能

■「可視化画像流速計測システム」の特長

  • 2台のカメラで同時に2断面、または同一断面であれば従来の2倍の領域を計測することができます。
  • 計測上の死角がなく、建物を取り巻く風の動きの全体を精度高く計測できます。また、複数建物の間の複雑な流れ場も計測できます。

複数建物の間の複雑な流れ場も計測可能

「可視化画像流速計測システム」は、透明な素材でできた建物の縮小模型と、高出力レーザー光を分岐する特殊ミラー、高感度デジタルビデオカメラ2台で構成されます。

本システムは、1本のレーザー光をミラーで2つに分岐し、模型の周囲を流れるミストにあて2台のカメラで撮影することで、2断面を同時に計測します。模型が透明なため、これまで難しかった模型背面の同時計測や複数建物の間の複雑な流れ場も計測可能であり、計測精度の向上と同時に計測時間の短縮を実現します。

本システムは、建物周りの粒子の流れを録画したデータから、粒子パターンを解析して、風向・風速を算出します。なお、計測データそのものは2次元ですが、複数の計測データと建物模型の映像を融合することで、風の3次元化を行っています。


カメラ2台を並列にセットし、計測領域を2倍とした計測(例)。レーザー光の分岐により2面のレーザーシート光を任意に配置可能


ミラーでレーザー光を分岐


従来は、建物周辺の流れを平面的に計測。模型背面は影となり、計測不能。また、複数建物には未対応


本システムは、計測結果を立体図として可視化。透明な模型を使うため死角がなく、複数建物の間の複雑な流れ場も計測可能

■立体視画像も出力可能

本システムは、立体視画像(3D映像)の出力にも対応しており、3D眼鏡を用いてより具体的に流れ場を確認することができます。


一般画像


立体視画像(裸眼では2重に見える)


風洞実験棟のご紹介

当社の風洞実験棟は、建設業界でも最大級の規模・高精度大型風洞です。ここでは、今回ご紹介した技術をはじめ、風に関するさまざまな先端技術を用いて、構造物の安全性確保や快適な住環境創出のためのさまざまな実験が行われています。

また、本施設は、水の浮力を利用した免震システム「パーシャルフロート免震構造システム」により、通常の免震構造の建物に比べ約3割高い免震性能を有しています。

■風洞装置の仕様

方 式 密閉式回流風洞
風 速 0~35m/s
測定部 幅3.5m、高さ2.5m、長さ20.31m
気流温度制御 風速10m/s以内で風路温度±2℃
送風機 直径4m、電動機DC200kW

カワセミがやってきた!

風洞実験棟の下にひろがるビオトープ「再生の杜」は、都市部では最大級の規模(約2,000m2)を誇る都市型ビオトープです。ここでは、自然生態系の再生、資源の再生、生活環境の再生などを実証実験しています。

カルガモをはじめ、動物に認知された生息空間、採餌場所、あるいは移動中継点として、地域の生物多様性の保全に寄与する施設として定着しており、下の動画のように、現在では「渓流の宝石」カワセミも見られるようになりました。


再生の杜(詳しくはこちらへ



「再生の杜」に飛来したカワセミ