2020.04.06

テクニカルニュース

健康・快適

3つの遮音機構による高機能遮音ルーバー「しずかルーバー®

当社は、屋外に設置された設備機器や屋上イベント等に起因する騒音問題の解決を目的に、低価格でありながら高い遮音性と通気性を兼ね備えたアルミ製ルーバー「しずかルーバー」を開発・製品化しました。

しずかルーバーは、羽板間の通気経路に設けた3つの遮音機構により、空気を通しながらも高音域から低音域まで幅広い周波数帯に対して騒音低減効果を発揮します。シンプルかつコンパクトな形状で、製造コストを既存製品の50%〜80%程度に抑えました。

2019年11月にオープンした高層ホテル「からくさホテルグランデ新大阪タワー」(大阪市淀川区)の地上設備ヤードの騒音対策建材として採用され、高い評価を受けています。

清水建設技術研究所屋上にて暴露試験中のしずかルーバー

遮音ルーバーが必要とされる背景

  • 住宅地と工業・商業地域の近接化:騒音対策への関心が高まる
  • 屋上ニーズの多様化:夜間、早朝に音が発生するイベントが増加
  • 景観法・景観条例の施行:性能だけでなく、美観へのニーズも増加

近年、都心部はもとより地方都市でも住宅地が拡大し、商業・工業地域に近接したマンションが多く見られます。それに伴い、マンションよりも建物高さが低い商業施設や工場の屋上に設置された設備機器からの騒音が問題になることが増えています。また、商業施設では屋上ニーズが多様化し、ヨガやフットサルなど様々なイベント会場として活用される機会が増え、夜間や早朝の騒音対策が必要不可欠となっています。

騒音対策として一般的な方法は、防音塀や遮音性のあるルーバーで騒音発生源を覆うというものですが、性能だけでなく見た目も重要な要素になりつつあります。例えば、京都市の建造物修景地区では、良好な景観の形成のための行為の制限として「屋上に設ける建築設備は、ルーバー等で適切に修景し建築物の本体と調和したものとすること」とされるなど、景観法に基づく方針が定められている例が少なくありません。

しかし、既存の遮音ルーバーは大量の吸音材を使用し、羽板を大型化・複雑化することによる性能向上を志向している製品が多いため、部材重量や価格が高く、大面積への適用は実質的に困難です。一方で、屋上騒音対策としての遮音ルーバーは、壁面はもとより上面を覆う必要があり、軽量かつ安価であることが求められています。しずかルーバーは、3つの遮音機構で性能と美観を両立するとともに、商品性を追求した次世代遮音ルーバーとして開発、実用化されました。

しずかルーバーの概要

性能

  • 高遮音性:反射・吸音・共鳴の音響要素によって広い周波数帯の騒音に対応
  • 高通気性:既存ルーバーの2倍以上の通気性を確保
  • 高耐候性:排水性、耐水性に優れ、ゲリラ豪雨でも内部浸水はほとんどなし
  • 低コスト:既存ルーバーの50%〜80%程度

3つの原理を組み合わせた高い遮音性

しずかルーバーの遮音機構

1.発生音が元に戻る反射板(高音域)

羽板間の通気部分から入ってきた高音域の騒音は、通気経路下側の放物線部(パラボラ)とその対面に位置する円弧部の2つの反射板によって跳ね返り、元の経路をたどって音源側に反射します。跳ね返った音による音源側の騒音の上昇は十分に小さく、無視できる程度である事を確認しています。(特許出願中/2020年6月現在)

2.スリット共鳴器(中音域)

中音域の騒音は共鳴を利用して処理します。通気経路の背面に密閉空間を設け、スリットで繋ぐことによって、その部分が共鳴器の役割を果たします。密閉空間の大きさとスリットの幅・高さによって共鳴する周波数は調整可能ですが、「しずかルーバー」では全体として高い遮音性能が得られるように中音域に合わせた設計をしています。瓶の口を吹いて鳴らすように、共鳴によって、騒音はスリット部で音源側に押し戻されます。(特許出願中/2020年6月現在)

3.耐候性吸音材(低音域)

低音域から高音域の広い周波数に対して中空部分に内蔵した吸音材が騒音を低減します。吸音材には耐候性、防水性に優れる不燃性ポリエステルを使用しました。グラスウールのようなガラス繊維材の吸音材と異なり、接着剤を使用していないため耐久性が高く、水にぬれても異臭の発生もありません。

シンプルな構造で優れた通気性を確保

しずかルーバーの気流の可視化

反射、共鳴、吸収を効果的に配することでシンプルかつ滑らかな形状となり、既存ルーバーの2倍以上の通気性(流量係数0.51〜0.55)を確保できました。また、通気性の向上が放熱性能にも好影響を与えている上、ルーバーにつきものの課題である風切り音についても、低騒音風洞にて実験を行い、実用上問題となる音が発生しないことを確認しました。

また空気の流れを可視化した結果、風切り音の発生原因となる羽板先端付近の渦が生じにくい形状となっていることを確認しました。

さらに、この形状が高い強度を生み、下地鉄骨が4mピッチの場合は耐風圧加重403kgf/m2まで、中間支持を行うことで耐風圧加重1600kgf/m2まで耐えることを可能としました。高層棟にぶつかった風が強い下向きの風となって低層棟屋上に吹き付けるダウンバーストにも耐えることができます。

  • 等分布荷重曲げ強度試験
  • 集中荷重曲げ強度試験

脱落リスクの少ない簡単な施工

既存ルーバーは複数部材の組合せで構成されていることが多く、風圧などの繰り返し外力を受けることでビスの緩みを生じ、脱落や圧力損失が大きくなることで破損するリスクがありました。しずかルーバーは一体成型に拘り、施工手間も含めた最適化を目指しました。内部側で取り付けが完結する構造のため、ルーバーを挟んで外部側との合番作業が不要となり、足場のない場所でも施工が可能です。取付けにハードドロックナットまたはUナットを用いることで、緩みや脱落リスクの少ない締結を実現しました。

しずかルーバーの設置状況

今後の展開

今後は製造委託先を通した外販を行い、騒音トラブルのない誰もが住みよい社会づくりに貢献します。また、低コストかつ組立が容易である強みを活かし、建設現場の仮設防音壁としてリース展開させることも検討中です。工事現場では防音対策として防音シートが用いられていますが、十分に通気を行うことができないため、発電機を始めとした排気を必要とする装置の騒音対策には限界がありました。そこで、しずかルーバーを枠組み足場に取り付けて装置全体を覆えば、通気性を確保しながら美観にも優れた仮設防音壁として活用することができます。

建設現場の仮設防音壁としての活用