2018.09.25

ConTECH.café

横浜市がわかめを養殖!?

酢の物やみそ汁の具だけじゃない

知らなかった!

某月某日、とあるターミナル駅近くの、懐にとてもやさしいチェーン系居酒屋で横浜に住む若い友人から聞いた話である。小学生3年生の娘さんと八景島シーパラダイスに行ったという。単に家族サービスをしたという家族愛キラキラの「美談」ではなかった。

八景島シーパラダイスには、「うみファーム」という施設があるらしい。そこで、「わかめ収穫イベント」に参加したというのだ。わかめ?…去年の冬に、同じイベントで植え付けたわかめの収穫をしたのだ。確かに水族館であるから、海藻がテーマのイベントがあっても別におかしくない。しゃぶしゃぶにして、湯にくぐらせると一瞬で茶色が鮮やかな緑に変わるのを見て歓声を上げるのなら、地味だけど、イベントとしてありかなとは思ったが、よくよく聞いて驚いた。

環境未来都市を標榜する横浜市が音頭を取る温暖化対策プロジェクトの一環としてのわかめの養殖らしい。平成23年から、横浜市漁業協同組合や八景島シーパラダイス等と連携して始まり、今年で7年。その名も「横浜ブルーカーボン」。なんか、さすが横浜らしい、とてもオシャレな語感だ。

陸上の植物よりも光合成が活発な海藻やマングローブ

わかめや昆布、アマモそしてマングローブなど海洋や沿岸の湿地に生息する生きものが光合成によって吸収する二酸化炭素のことを「ブルーカーボン」と言うらしい。青い海、なるほどね!なネーミングだ。

国連環境計画の2009年のレポートによると、陸上の植物に比べて光合成がきわめて盛んで、その二酸化炭素吸収量は、世界中の排出量の6パーセントに上り、陸上の植物全体に匹敵するという。ちなみに、森林など地上の樹木や草木からの二酸化炭素は「グリーンカーボン」と呼ばれる。

横浜市の温暖化対策統括本部プロジェクト推進課のホームページを見てみた。わかめのこの温暖温室効果ガスの削減効果を活用して、世界トライアスロンシリーズ横浜大会や横浜シーサイドトライアスロン大会などで排出された二酸化炭素のオフセット(埋め合わせ)を行っていくらしい。

SDGsはわれわれも当事者である

横浜市の取り組みは、横浜港そのもので行われているのではない。八景島シーパラダイスの中の、人工的に整備された環境下で続けられている、いわば社会実験だ。その成果が、果たして本格的に横浜港で展開される日は来るのだろうか。そうあってほしいと、つくづく思う。

山下公園。一つのソフトクリームを仲良く食べているカップルを横目に、岸壁から海をのぞき込む。きれいとは言えない。漂流物と共に、観光客が捨てたであろう飲み物の容器とかがプカプカ。それなのに、小魚もけっこう泳いでいる。クラゲもゆーらゆーら。これが、ロマンチックな風景とは真逆な不都合な現実だ。

SDGs。Sustainable Development Goals。

なんかピンとこない。持続可能な開発目標。字面だけ追うと、わかったようなわからないような。どうも具体的な絵が浮かばない。ワカメによる永続的な共生。わかめと、これからもずっと共に生きる。そう牽強付会(けんきょうふかい)すると、何かが見えてくるような気がする。われわれの問題のように感じてくる。

横浜市のこのわかめの養殖は、17ある開発目標の14番目の「海洋資源」の利用による持続可能な開発である。わたしたちの食卓にずっとあったわかめ、これからもあってほしいわかめ。藻場は、海のゆりかごである。そこで魚介類が豊かに育まれる。水質も良くなる。東京湾でも、葛西臨海公園とかで実現可能なはずである。

突如、目の前の藻場でラッコが現れ、あのユーモラスな格好で腹の上でコンコンコンと貝を割る。愉快じゃないか。タコとわかめの酢の物に、たけのこの若竹煮をつつきながら、つくづくそんなことを想像してみた。

自分の都合のいいように、強引に理屈をこじつけること

大槻 陽一
有限会社大槻陽一計画室 ワード・アーキテクト