-
翼は藍色の空を飛ぶ(伊野 隆之)
水無月は座席のディスプレイで、コックピットからの風景を見ていた・・・
-
ストップ弁の秘密(江坂 遊)
学生三人の見学は、トンネル工事現場とだけしか聞かされていなかった。まさか、地下にこんな巨大な施設があるとは思いも寄らないことだ・・・
-
月の魔女(太田 忠司)
アラームを聞いて駆けつけた池谷に、ラウールは緊張した表情で告げた・・・
-
火星人の誕生(小川 哲)
火星は今、春だ。
長い冬が明けると、火星には二酸化炭素の風が吹く・・・ -
眠猫草(ねむりねこぐさ)(矢崎 存美)
「母さんにお願いがあるんだ」息子の良はそう言い、大きめな洗面器くらいの容器を光に差し出した・・・
-
あらしの夜に(渡邊 利道)
台風によって建設作業が中止となり、杉岡がコーヒーに口を付けた途端、会社から支給されている端末のアラートが点灯した・・・
-
光を呑む(長谷 敏司)
「この落成式が済んだら、星を出るんですな」
技術者のホシノに声をかけてきたのは、現場監督のランドだった・・・ -
バベルの明日(林 譲治)
自宅のエージェントAIがインドネシアの地震を報告してきたのは朝食を終えたばかりの午前6時のことだった・・・
-
支保工(藤井太洋)
緊急通報の通知ドットが視界の端で点灯したのは、永代天音(ながしろアマネ)がコーヒーを注いだマグカップを二つ持ち上げた時だった・・・
-
ワルツを踊る、ワイングラス(藤崎慎吾)
私の部屋の壁から手が生え始めたのは、3日くらい前のことだ・・・
-
楽園への脱出(井上雅彦)
その都市は「死」に瀕していた。かつて、艶やかな肌のように輝いていた外装は無惨にひび割れ、たくましい筋肉を思わせる鋼材は朽ちかけていた・・・
-
ルナからの帰還(伊野隆之)
父の葬儀が終わって、やっと一息ついたところだった。私は夫の直哉と一緒に瑠那を連れて、実家の近くの公園に来ていた・・・
-
新しいお遊び(新井素子)
「う・・・わあっ」マリンシティ・K・1に上陸した瞬間、私は思わず声をだしてしまっていた・・・
-
理想の小説家(門田充宏)
諸君は小説家を目にしたことがあるだろうか?いや、答えて戴くには及ばない。わざわざ口にしてくれなくても・・・
-
海が、見える(草上仁)
今年83歳を迎える洋子は、勝手口の木戸にもたれかかると、口をへの字に曲げて顔じゅうの皺を深めた・・・