2018.07.17

ConTECH.café

事実はハリウッドよりも「驚」なり!

NHKスペシャルのディープインパクト!!

2017年9月2日放映のNHKスペシャル メガクライシス・シリーズ巨大危機。スーパー台風に集中豪雨といったいままで経験したことのない未曾有の巨大自然災害にスポットライトを当てた迫真のドキュメンタリー番組だ。ハリウッドの巨額の予算を投下してきたパニック映画なんて目じゃない。事実、あるいはいまこの現実のみがもつ衝撃に毎回、マジに背筋がゾゾっとなる。中でも「第1集 都市直下地震 新たな脅威“長周期パルス”の衝撃」は本当に衝撃的だった。

長周期パルス?初耳だ。3.11のとき、大阪の咲洲庁舎に震度3なのに甚大な被害を出したのは、ええっと、確か長周期地震動だったはずだけど、それのこと?拙い地震知識しかない頭はパニックってしまった。どうやら違うようだ。周期3秒ほどの長周期のゆれが、大きな変位を伴って一気に発生する大きな地震動を、そう呼ぶらしい。熊本地震で、震度7を記録した西原村で初めて観測された。ドクン。地震発生の10秒後、揺れが1往復するのに3秒という大きく脈打つような1発が襲ってきたのだ。だから、パルス、まさに大地の脈拍なんだ。

この長周期パルスが、もし新宿副都心の超高層ビル群を襲ったら…。

これまでの直下型地震のようにガタガタと小刻みな短周期の振動なら難なくそのエネルギーを吸収してしまうが、これが襲ったら一撃でゆーらゆーらと大きくたわみ、大きなダメージを被る。新宿の29階建ての工学院大学ビルで、同大学の先生が、最も負荷がかかる低層階を中心に鉄骨の骨組みが赤く変形するところをシミュレーションして見せてくれた。その際に教授が言った「条件が悪いと、倒壊する可能性はゼロではなかった」というコメントが、耳に刺さった。3.11の新宿副都心の超高層ビルの大きくたわむ映像に「折れる!」と固唾をのんでみていたあの悪夢のような光景が、現実のものになるかもしれないのだ。オーマイガー!

長周期パルスの研究はどこまで進んでいるのか。その対策は?

刻一刻と差し迫っている南海トラフ巨大地震と首都直下地震。その時も、この長周期パルスが容赦なく襲ってくるのだろうか。

素朴な疑問として、熊本の地盤と、新宿副都心の地盤はたぶん違うから、一概には長周期パルスは発生しないのではという、楽観的な、というよりも手前勝手なことをついつい思ってしまう。

はたして新宿副都心のあるこの首都圏は、長周期パルスが襲ってくる最も危険なエリアなのか。本当に逃げる間もなく襲ってくるものなのか。ああ、悪い方に悪い方に考えてしまう。悪い癖だ、このマイナス思考は。とにかく、これだけは言える。「正しく怖がる」情報を!

対策の切り札ダンパーは、どこまで進化してる?

では、研究が始まったばかりのこの長周期パルスへの対策は、どんな進捗状況なのだろう。どうやら「ダンパー」がカギを握っているらしい。

建物へのダメージは、短周期の小刻みな揺れの中小地震と激しい横揺れの巨大地震によって異なる。ダンパーも、それぞれの特性に合わせて対応することを考えると、両方対応だと当然大がかりになり、新築でない限り設置できないということになる。

しかし、いまは地震規模に合わせて自動的に減衰性能を切り替えるまで進化しているらしい。頼もしいじゃないか。なんか、ホッとした。

ただ、そうした最新技術の進歩を、ただ専門家に任せっきりで、私たちは何もしなくて受益者然として受け身のままでいいのだろうか。長周期パルスという脅威は確かに存在する。近い将来、それが襲ってくる可能性はある。その事実を、当事者として、しっかりと目を背けずに認識する。そこから、はじめるしかない。

技術者、研究者のみなさん!頼みます。信頼してますよ。もちろん、私も頑張るぞー!

大槻 陽一
有限会社大槻陽一計画室 ワード・アーキテクト
参照資料
  • 「長周期パルス 超高層ビルを破壊する脅威の揺れとは」
    (読むNスぺ NスぺPlus 2017年10月6日)
  • 「直下型地震の新たな脅威 長周期パルス」
    (NHKニュースおはよう日本 2017年9月1日)
  • 「見たくないものを見よ 週のはじめに考える」
    (中日新聞2018年3月11日社説)