2020.07.27

先端技術探訪

これからの避難所のあるべき姿とは

これからの避難所のあるべき姿とは

パンデミックによって私たちの社会は一変しました。でも考えてみれば、私たち人類はさまざまな感染症と戦い、それを乗り越えながらこれまでの歴史を紡いできたのです。このコロナ禍を教訓に変えて、ライフスタイルやワークスタイルをアップデートしていくことは、さまざまな分野で求められています。中でも、喫緊の課題としてクローズアップされているのが、避難所の問題ーー今回は避難所のこれからについて考えてみました。

避難所でも防ぎたい「3つの密」

災害大国といわれる日本。地震や台風はいうに及ばず、最近はゲリラ豪雨のような局所的なものであっても、地域住民の方々の生命を脅かすほどの被害が発生することも増えています。そんなときに頼みの綱となるのが避難所です。

とはいえ、これまでの避難所は決して余裕があるとはいえないスペースに、大勢の人が肩を寄せ合って共同生活をせざるを得ないことが常でした。これは厚生労働省「新しい生活様式」でも回避が推奨されている「3つの密」そのものであり、新型コロナウイルスの主たる感染経路が飛沫感染と接触感染と考えられていることから見ても望ましい状況ではありません。せっかく災害を逃れて避難してきても、そこでウイルスに感染してしまう可能性が高いのでは元も子もないでしょう。

日本建築学会や土木学会など58の学会が参加する「防災学術連携体」では「感染症と自然災害の複合災害への備え」という緊急メッセージを発表しています。これによると、従来は体育館しか使用されていなかった避難所を、教室を併用するなどして物理的なスペースを増やすことなどに加え、ついたての設置による飛沫感染防止を訴えています。

同様に内閣府でも「COVID-19 禍での水害時避難所設置について」という文書で、自治体災害対応担当者に対し「簡易ベッドとパーティションを用いたゾーニング」による飛沫感染防止を提言しています。

確かに、避難所に簡易ベッドやパーティションが完備されていれば、床に雑魚寝という従来のスタイルよりは感染リスクを減少させることができそうです。

3密の回避に最適な素材を考える

では、避難所で使われる簡易ベッドやパーティションに最適な素材とは、どのようなものなのか。まず、使わないときはコンパクトに収容できる、または、必要になった時に迅速に調達・手配が可能なもの。そして組み立てなどの際の取り回しが容易で、なおかつある程度の強度が確保できる素材が考えられます。もちろん、コストという点も見逃せません。となると、候補に挙がるのはダンボールやプラスチックなどになるでしょうか。

ここで興味深い報告をご紹介しましょう。エアロゾル(空気中に浮遊するウイルスを含む微小な粒子)、銅、ステンレス、プラスチック、ダンボールの5つの環境下で新型コロナウイルスがどれだけの時間、残存しているかという調査によると、ダンボールでは24時間後には残存が確認されなくなったのに対し、ステンレスでは48時間、プラスチックの場合は72時間も残っていたというのです。

新型コロナウイルスはまだ人類にとっては新しいウイルスということで、残存の条件やウイルスが減衰する機序が明らかになるのはまだこれからのようですが、接触感染を避けるという意味では、ウイルスが残る時間が長いプラスチックよりもダンボールのほうが優位であるということはいえそうです。

実際にダンボールベッドの有用性に着目し、避難所への導入検証を進めたり、メーカーと緊急時の優先供給協定を結んだ自治体も少なくないとのこと。

また、水を入れた大きなビニール袋をダンボールに入れれば、土のうのように浸水を防ぐ“水のう”としても使えるそうです。直方体や立方体なのでブロックのように並べやすく、玄関口をふさぐなど急場をしのぐ程度なら十分に機能するとのことです。発想次第でダンボールにもさまざまな活用法があるものです。

感染の“難”も避けられる避難所へ

実は清水建設にもダンボールを活用したソリューションがあります。その名も「KAMIWAZA」。王子ホールディングスと共同開発した紙素材の建設現場仮設資材ソリューションです。

「KAMIWAZA」で使用しているダンボールは、加工性・可搬性に優れるというダンボールならではの特性を保持しつつ、防水、耐火、防音に優れるなどの機能性を備えているのが特長です。特に強度の面は建設現場の仮設資材に使われるほどですから、その頑丈さは推して知るべし。長く使えるだけでなく、不要になった場合もリサイクルが可能です。

避難所とは文字通り、難を避けるための場所。災害の難だけでなく、感染の難も避けられる避難所が常識になってきています。すでに「KAMIWAZA」で使われるようなダンボールはベッドやパーティションとして人々を守りはじめています。避難所での「あたりまえ」として、今後ますます活用の幅が広がっていくことでしょう。

野崎 優彦
さまざまな企業のコミュニケーション活動をお手伝いしているコピーライター。株式会社モーク・ツー所属。