2018.10.29

ConTECH.café

信州伊那でタダ酒三昧

これだから工場見学はやめられない

別に「工場萌え」ではないが、テレビで「超人気カップラーメン○○ができる裏側に潜入」とかやっていると、へえ~と感嘆しながらつい見入ってしまう。某月某日、中央アルプスと南アルプスに挟まれ、天竜川が悠々と流れる伊那谷で、タダ酒を飲んで来た。

まずは薬用酒工場。

観光地としても人気のスポットだ。まるで森林公園のような敷地に近代的な工場群が溶け込んでいる。女性ガイドによる見学ツアーに参加。清潔。真っ先に感じたのは、それだ。そして、静寂。ガラス越しとはいえ、少しは機械音がするだろうと思っていたが、聞こえてこない。なぜか感情移入したのが、検品ライン。不良品に振り分けられてベルトコンベヤーを流れていくビンに、我が身を重ねてしまったのだ。待ってました!の試飲。こんなにいろんな種類を出していたのか、と驚いた。バーで出してもおかしくない「銘酒」も堪能した。

次は、日本酒の蔵元へ。

モダンな薬用酒工場とは対照的だった。清潔ではないという意味ではなく、感じる空気、雰囲気がまるで違う。土足厳禁なのでスリッパに履き替え、中に入り説明を受けた。予約の際「納豆やヨーグルトを食べずに来てください」と言われた理由が氷解。そこに住み付き、そこの酒の個性をつくっている麴菌の働きを乱すのだ。待望の試飲。スーッとのどを爽やかに流れる。馥郁とした余韻が口中に残る。

3軒目は、地ウイスキーと地ビールの工場。

紙幅の関係で詳しくは書かないが、ウイスキー蒸溜所のポットスティルの実物を初めて目にし胸キュン。

清潔はビョーキ!?

夕食は「うなぎ」を奮発。

試飲で気が大きくなっていたのだ。秘伝のたれ。それに、うなぎを何度もくぐらせて焼き上げる。「先代からですから、かれこれ半世紀くらいですかね」と大将は言った。継ぎ足しはしても、基本的に捨てたり、変えたりはしない。だから、秘伝のたれ。焼鳥屋や寿司屋でもよく聞く。それは清潔なものだろうか、とふと思った。もちろん、わたしは潔癖症ではないので、秘伝のたれ肯定派であるが。

ホテルの自室でつらつら殊勝なことを考えた。「清潔ってなんだろう?」と。

今日訪ねた工場は「これぞクリーン!」と言いたいほど、気持ちのいいものだった。どこまでも清潔で、清潔感にあふれていた。一方で、日常に戻ると、いたるところで清潔が叫ばれて、至上の価値とされている。東京医科歯科大学の名誉教授で、寄生虫学の世界的権威である藤田紘一郎さんの名著にして怪著『清潔はビョーキだ』を思い出した。

40数年前のことをカミングアウトする

大学の1回生と2回生の夏休みの1ヵ月、海水浴場の民宿でアルバイトをした。「おさんどん」である。タンクトップに短パンの上にエプロンをして、各部屋に夕食と朝食を運ぶのが主な仕事。

告白(懺悔)したいのは厨房でのあること。

ちょっと怖い、なんか訳ありげな流れの板さんの指揮のもと、食器洗いとか雑用全般をしたのだが、慣れてきた時、酢の物の盛り付けを任された。それも素手で。厨房は、火を使うので、とにかく暑い暑い。汗が、酢の物のボールにしたたり落ちた。塩分だから、ま、いいか、と。さすがに、造り(関西では刺身を一般的にそう言う)は100パーセント板さんマターであったが。

唐突だが、質問したい。

自宅でステーキを口に入れようとしたら床に落下。さて、どうする?わたしは、食べる。では、ファミレスだったら?わたしは、テーブルの上だったら躊躇なく食べるが、床だと拾いはするが食べない。あまり親しくない人との会食だったら、テーブルの上のも食べないかもしれない。テレビCМでは、布巾でいくら拭いたとしても、ほら食卓にはこんなに雑菌がうじゃうじゃ!だから、この除菌スプレー!とアピールしている。身の回りは、殺菌・除菌・滅菌のオンパレード。

これでもかという勢いの日常生活のクリーン化、日常空間の食品工場さながらのクリーンルーム化。果たして、いいことなのかどうなのか。

うーむ。わたしは、藤田先生を信じる。なにせ、15年間、6代にわたり、「サトミちゃん」「キヨミちゃん」等と名付けたサナダムシを己が体内で飼育。中性脂肪を減らし、メタボを解消し、以前にも増して健康体になり「体にいい寄生虫」(これも名著!)を実証したお方である。

大槻 陽一
有限会社大槻陽一計画室 ワード・アーキテクト
参照資料
  • 日本石鹸洗剤工業会 石けん洗剤知識
    除菌・殺菌・滅菌の違いをとても簡潔に説明している。「菌制御関連の用語に対する生活者のイメージのまとめ」では、われわれの誤解・曲解をやんわりと修正してくれる。寺田寅彦が言う「正しく怖がる」ことの大切さを改めて痛感する。